年金手帳と計算機

年金を受給している方が、比較的低金利でまとまったお金を借りる方法があります。それが、年金担保貸付(労災年金担保貸付)です。

低金利で利用しやすい制度です。しかし、年金はライフラインとして、とても重要なものなのでデメリットを考慮に入れた上で慎重に利用しましょう。

年金担保貸付の借入れに向いている方の特徴

  • 年金を受給している
  • カードローンより低い金利で借りたい
  • 融資が1ヶ月ほど後になってもよい
  • 長期で考えれば、年金から返済しても大丈夫

年金担保貸付とは

年金担保貸付は年金受給者が年金で返済することを前提に、お金を借りる制度です。

年金受給が必須条件ですが、キャッシングに比べると低金利でお金を借りることができます。

厚生年金や国民年金はよく知られていますが、労災保険からの年金を担保とすることも可能で、この制度を労災年金担保貸付といいます。

閣議で2010年12月に年金担保貸付の廃止が決まっていますが、廃止時期は明確になっていません。

年金担保貸付は年々縮小しているものの、2016年には495億円の融資実績があります。福祉的要素が強い為、急に全廃止するのは難しいようです。

年金担保貸付の実績
貸付種別 2016年融資額 2016年融資件数
年金担保貸付融資実績 495億円 91,221件
労災年金担保貸付融資実績 11億円 1,395件

年金担保貸付の注意点・デメリット

収入に相当する年金は生活に直結するお金です。無計画に融資を受けると生活保護を受けることになりかねません。実際そういった事例が多くなったため、廃止の流れとなったようです。

また、自己破産しても年金担保の貸付は無くならないので十分注意が必要です。

ココ以外から年金担保は違法!

過去貸金業者も年金担保の融資を行っていましたが、現在は法律により禁止されています。

独立行政法人福祉医療機構(独立行政法人福祉医療機構代理店である受託金融機関)のみで貸付が許可されています。

紛らわしい文章で年金担保の貸付を誘う独立行政法人福祉医療機構以外のサイト等は利用しないようにしましょう。

利用条件

まずは自分が利用している年金が申込みできるものなのかチェックしてみましょう。

利用対象の年金・対象外の年金

対象となる年金(利用できる)

  • 老齢基礎年金
  • 老齢年金
  • 遺族年金
  • 障害年金

上記の年金の名称でわからない場合、お手持ちの年金証書が下記のいずれかの場合は申込み可能です。
 

対象となる年金書類(利用できる)

  • 国民年金証書
  • 厚生年金保険年金証書
  • 国民年金・厚生年金保険年金証書
  • 船員保険年金証書
  • 労働者災害補償保険年金証書

 

利用不可の年金

  • 厚生年金ではなく厚生年金基金
  • 国民年金ではなく国民年金基金
  • 障害年金ではなく特別障害年金
  • 老齢年金ではなく老齢福祉年金
  • 確定給付企業年金
  • 確定拠出年金

年金種別以外の利用不可の条件

上記の利用できる年金であったとしても、下記のことに当てはまると申込むことはできません。

  • 年金の全額停止されている方
  • 生活保護受給者
  • 年金担保融資中に生活保護を受け、2014年12月1日以降に生活保護を辞めてから5年経っていない方
  • 65歳時の年金決定手続き期間中で、老齢厚生年金(特別支給)を受け取っている方
  • 年金融資中で返済途中の方
  • など

年金担保貸付の融資詳細

利率

2017年4月1日時点の利率は下記のとおりです。

年金担保 1.9%
労災年金担保 1.2%
キャッシング 3.0%~18.0%

このように、キャッシングの利率と比べると、約6割以下とかなりの低金利です。

融資額

  • 受給年金額に0.8かけた金額以内(所得税額は除く、年額)
  • 10万円~200万円以内(1万円単位)※生活必需品の購入目的の場合は10万円~80万円
  • 1回の返済する額(定額)の15倍以内の金額(元金相当額を約2年6か月以内で返済)

上記3つの条件に当てはまる範囲内の額が融資額となります。

使途

下記の目的での融資が認められており、確認資料の提出が必要です。

  • 冠婚葬祭
  • 生活必需品の購入
  • 保険・医療
  • 介護・福祉
  • 教育
  • 事業維持
  • 住宅改修等

確認書類例:介護・福祉が目的の場合

  • 介護用器具購入の見積書、パンフレット、カタログ、領収書
  • 介護施設の利用・入居料金の見積書、請求書、領収書…

保証人

審査基準を満たす連帯保証人を立てるか、保証料が必要となりますが信用保証機関の「信用保証制度」も利用可能です。

注意する点

「年金担保の必要事項として連帯保証人は必須」と説明し、カードローン(連帯保証人不必要)を紹介するサイトがありますが、正しくは信用保証制度(一定条件有)も利用できます。

融資までの流れ

  1. 相談
  2. 申込み
  3. 審査
  4. 決定
  5. 融資

融資までの流れは上記の通りです。申込から融資までは約4~5週間の期間が必要です。

ただし、月2~3回の申込締切日と融資予定日があり、公式サイトでスケジュールが確認できます。

 例)申込締切日:3月12日→融資予定日:4月10日

独立行政法人 福祉医療機構 公的年金担保融資のご案内・ご融資のスケジュール
http://www.wam.go.jp/

相談

取扱金融機関、もしくは独立行政法人福祉医療機構の年金貸付課で相談できます。

申込み

必要書類を用意の上、取扱金融機関で手続きをします。

取扱金融機関

都市銀行5行、地方銀行104行、信託銀行2行、信用金庫224行、信用組合40行(「独立行政法人福祉医療機構代理店」と表示されています)

必要書類
  1. 年金証書
  2. 申込書
  3. 年金支給額証明書類
  4. 写真付きの本人確認書類
  5. 実印と印鑑登録証明書
  6. 融資目的を確認するための資料
  7. 保証人等
審査・決定・融資

申込日による融資実行予定日のスケジュールはありますが、実際の融資が行われる日程は、申込みをした金融機関に確認しましょう。

審査の結果連絡は取扱金融機関より申込者本人へ電話にて行われます。融資実行日に指定預金口座へ振込まれます。

返済

年金支給機関からの年金支給が取扱金融機関に渡り、返済に相当する額を充当後、残金が受給者の指定口座へ送金されます。