源泉徴収票

消費者金融やクレジットカード会社など全ての貸金業者が守らなくてはならない貸金業法という法律では、貸金業者に対して消費者の返済能力を超える貸付けを行うことを禁止しています。

これは借り手がお金を借りすぎて多重債務状態に陥ったり、生活破綻してしまうことを防ぐための制限です。

実際には返済能力の調査をより厳密なものにしたり、貸付けの額の制限を行っています。

ここでは、貸金業法で定められている、消費者の返済能力を超える貸付の防止を目的とした規制について解説していきます。

 

総量規制について

総量規制とは、消費者のお金の借りすぎを防ぐために、貸金業者に対して貸付けの額を規制するものです。

ただし、金融機関によっては総量規制の対象外の場合があったり、住宅ローンなど一部の借入れは総量規制から除外されていたりと、全ての借入れに適用されるわけではありません。

どのような場合が対象外になるのかなど具体的に解説しながら、総量規制について解説していきます。

 

総量規制とは

総量規制とは、貸金業者が個人に対してお金を貸す際に、貸金業者からの総借入残高が借り手の年収の3分の1を超えて貸付けてはいけないという規制のことです。

例えば、年収300万円の人がA社から50万円を借りている状態でB社のカードローンに新たに申し込んだ場合について考えてみましょう。

年収の3分の1である100万円を超える貸付けはできないため、すでにA社から50万円借りているこの人に対し、B社は50万円を超える貸付けはできないということです。

 

「年収」に含まれる収入

ここでいう年収には、以下のような収入が含まれます。

  1. 給与・賞与
  2. 年金
  3. 恩給(※1)
  4. 定期的に受領する不動産収入
  5. 年間事業所得

宝くじや、競馬などのギャンブルによる収入は、一時的なものなので年収には含まれません

恩給とは?

恩給とは、公務員を一定期間務めた人に対して年金のようなものを払う仕組みです。1950年代~1960年代に公務員共済制度に移行したため、実際に恩給を受給しているのはそれ以前に公務員を退職した人だけです。

 

年収はどのように調べるのか

総量規制の基準となる年収ですが、貸金業者はどのようにして消費者の年収を調べるのでしょうか。

年収は基本的には自己申告です。どのカードローンの申込みでも、必ず年収を申告する項目があります。ただし、次のいずれかに該当する場合は収入証明書を提出する必要があります。

 

収入証明書の提出が必要な場合

  • 1つの貸金業者からの借入れが50万円を超えるとき
  • 複数の貸金業者からの借入れ総額が100万円を超えるとき

 

収入証明書となる書類の種類

収入証明書として認められる書類は以下の書類です。

  1. 源泉徴収票(※)
  2. 支払調書(※)
  3. 給与明細(直近2カ月分以上)
  4. 確定申告書(※)
  5. 青色申告決算書(※)
  6. 収支内訳書(※)
  7. 納税通知書(※)
  8. 納税証明書(※)
  9. 年金証書
  10. 年金通知書(※)

※最新のもの

 

総量規制の対象

総量規制は貸金業法という法律で定められており、貸金業者ではない金融機関からお金を借りる場合は総量規制の対象にならず、年収の3分の1を超える借入れをすることができます。

 

貸金業者とはどのような企業?

貸金業者とは、お金を貸す業務を行っていて、財務局や都道府県に登録をしている業者のことです。具体的には、消費者金融やクレジットカード会社などが貸金業者に当たります。

一方、銀行や信用金庫などもお金を貸す業務を行っていますが、貸金業者ではありません。

つまり、銀行のカードローンは総量規制の対象にならないため、年収の3分の1を超えてお金を借りることができます。

 

貸金業者かどうか調べる方法

お金を借りようとしている業者が貸金業者かどうか調べるには、金融庁のウェブサイトにある登録貸金業者情報検索サービスを利用しましょう。

業者名を入力して検索結果があれば貸金業者、検索結果がなければ貸金業者ではありません。

金融庁 登録貸金業者情報検索サービス

 

年収の1/3を超えても大丈夫な業者とは?

貸金業者ではないから年収の3分の1を超えて借入れができるからといって、貸金業者ではない聞いたこともない業者から絶対にお金を借りてはいけません。

貸金業者ではないのにお金を貸す業務を行っている業者は違法業者であり、いわゆる闇金です。

闇金の中には、法律で定められている金利以上の高金利で貸付けを行ったり、法律で禁止されている方法で取り立てを行う業者もあります。

また、本来であれば財務局や都道府県に貸金業者として届け出なければ付与されない貸金業登録番号を偽装して、実在する貸金業者を装ったりする悪質業者もあります。

お金を借りようとしている業者が闇金かどうかを調べるには、日本貸金業協会のウェブサイトで闇金の検索ができるため、怪しいと思ったら事前に調べて、絶対に悪質業者と契約しないようにしましょう。

 

総量規制の対象とならない契約

貸金業者からの借入れでも、総量規制の対象にならないものがあります。

 

総量規制から除外されるローン

住宅ローンや自動車ローンなどの契約は総量規制から除外されるため、借入れ金額が年収の3分の1を超えても問題ありません。

また、除外される金額は総量規制の借入残高にも算入されません

例えば、年収300万円のAさんが100万円の自動車ローンを組んだ場合について考えてみましょう。

自動車ローンは貸金業者からの借入れとして算入されないため、Aさんは新たに100万円までのカードローン契約ができるということになります。

では、具体的に総量規制から除外される主な借入れを確認してみましょう。

 

総量規制から除外される借入れ
  • 住宅ローン
  • つなぎ融資
  • 自動車ローン
  • 契約者または生計を共にする親族の高額療養費を支払うための借入れ
  • 有価証券を担保とする借入れ
  • 不動産を担保とする借入れ
  • 売却予定の不動産の売却代金により返済できる借入れ

つなぎ融資

つなぎ融資とは、注文住宅を建てる場合に、建物が完成した後に実行される住宅ローンの融資の前に、着工金や中間金など完成前のまとまった支払いが生じた際に、つなぎとして行われる融資のことです。

 

総量規制の例外

借り換えローンや緊急医療費の借入れなどが該当する総量規制の例外は、住宅ローンや自動車ローンなどが該当する総量規制の除外とは異なります。

例外に当たる借入れは、例外的に借入れすることはできますが、借入れ金額は総量規制の借入残高に算入されます

例えば、年収300万円のAさんがすでに80万円の借入れがある状態で、50万円の緊急医療費の借入れが必要になった場合、総量規制の例外に当たるため、年収の3分の1である100万円を超えてしまいますが、借入れはできます。

ただし、借入残高は130万円になるため、返済して借入残高100万円未満になるまでは新たな借入れはできません。

では、具体的に総量規制の例外となる主な借入れをみていきましょう。

 

総量規制の例外となる借入れ
  • 個人顧客に一方的に有利となる借り換え
  • 親族(※)の緊急医療費の借入れ
  • 特定緊急貸付契約
  • 個人事業主が借入れをする場合
  • 配偶者と合算して年収合計の3分の1を超えない借入れ

※ 契約者または生計を共にする

 

個人顧客に一方的に有利となる借り換え

個人顧客に一方的に有利となる借り換えとは、追加の担保や保証なしに毎回の返済額や総返済額が減少する契約など、借り手にとって有利な契約に乗り換えることです。借り換えローン・おまとめローンなどがあげられます。

 

特定緊急貸付契約

特定緊急貸付契約とは、海外で緊急に必要になった費用や葬儀費用など、「社会通念上緊急に必要と認められる費用」を支払うための貸付契約のことです。

 

個人事業主が借入れをする場合

「事業の実態が確認でき、事業主の返済能力を超えない場合に限る」という条件があるため、事業計画書などの書類の提出を求められることがあります。

 

配偶者と合算して年収合計の3分の1を超えない借入れ

例えば、夫の年収が300万円、妻の年収が150万円の場合、通常であればそれぞれの年収の3分の1である、夫が100万円、妻が50万円までしか借入れができません。

しかし、この例外を適用すれば、夫に借入れがない場合、妻は150万円まで借り入れることができるということです。ただし、例外を適用するには配偶者の同意が必要です。

 

クレジットカードでのショッピングは総量規制対象外

クレジットカードのキャッシングは総量規制の対象になりますが、ショッピングは総量規制の対象にはなりません。そのため、年収の3分の1以上の借入れがある場合でも、クレジットカードで買い物をすることはできます。

 

総量規制を守らないとどうなる?

もし総量規制を守らず、年収の3分の1を超える借入れができてしまった場合、消費者が何らかの処分を受けたり、刑罰を科されることはありません

一方貸付けを行った貸金業者は、法律に違反しているとして行政処分を受けるため、どの貸金業者も消費者の年収の3分の1以上の貸付けを行わないよう、慎重に業務を行っています。

 

借り手の返済能力を調査する義務

貸金業者には、消費者がお金を借りすぎて多重債務に陥ることを防ぐため、総量規制に加えて、借り手の返済能力を調査することが義務付けられています。

では、具体的にどのような方法で返済能力の調査をするのかみていきましょう。

 

信用情報機関を利用した調査は義務

貸金業者は、消費者の返済能力を調査するため、カードローンやクレジットの契約をする前の審査の際に、信用情報機関を利用して申込者の返済能力を調査することを義務付けられています。

 

信用情報機関とは

信用情報機関とは、信用情報を金融機関から集めて管理し提供する機関です。信用情報機関に加盟するクレジットカード会社や消費者金融などの金融機関は、自社で契約する際に取得した契約者の信用情報を、信用情報機関に登録します。

信用情報機関は登録された情報を管理し、管理された情報は、加盟している各金融機関が新たに消費者と契約を結ぶ際に、消費者の支払い能力を正確に調査できるよう、金融機関に提供されます。

私たち消費者の信用情報は、信用情報機関を通じて、契約したことのある金融機関以外の金融機関にも共有されているのです。

そのため、例えばA社でカードローン契約をした際に延滞してしまったことがある人は、新たにB社のカードローン契約を申し込む際に、信用情報機関を通じてA社での延滞記録が共有され、B社での審査で支払い能力がないとみなされて審査に落ちてしまう可能性があります。

信用情報とは

信用情報とは、クレジット契約やローン契約などの信用取引に関する履歴情報のことです。

 

信用情報機関に登録されている情報

信用情報機関には、氏名・生年月日・電話番号・住所など、本人を特定する情報や、クレジットやローン契約中の支払い状況や残高金額、延滞情報などの取引に関する情報、契約日、貸付金額など契約に関する情報などが登録されています。

 

信用情報の利用方法

では、金融機関は消費者の支払い能力を調べるために、信用情報をどのように利用しているのでしょうか。

まず、他社からの借入残高を知らなければ、総量規制を守ることができません。信用情報機関に登録されている借入残高をみて、総額で年収の3分の1を超えないように限度額が決められます。

また、他社での支払い状況や延滞情報も支払い能力を調べるための重要な項目です。

他社で支払いが遅れて延滞したという情報が登録されていれば、支払い能力がないとみなされて審査に落ちる可能性が高くなります。

他にも、短期間に何度もカードローンに申し込んだ記録があると、審査担当者に「お金に困っている人、他社の審査になかなか通らない人」という印象を与えてしまうため、審査に落ちる可能性が高くなります。

このように、金融機関では信用情報機関の様々な情報を利用して、支払い能力の調査をしています。

 

限度額の増額時の審査

貸金業者には、一度契約をしてから限度額を増額する場合にも、信用情報機関を利用して、新規契約時と同様に顧客の支払い能力を調査することが義務付けられています。

そのため、新規契約時と比較して年収が上がっていなければ、総量規制の関係で増額をすることができない可能性があります。

また、新規契約時から増額申し込みの間に延滞をしてしまった場合は増額ができません。

 

まとめ

総量規制が導入され、基本的には年収の3分の1を超える借入れはできません。

ただし、銀行など貸金業者以外の金融機関からの借入れは総量規制の対象外でることや、住宅ローン・自動車ローンなど、総量規制から除外されるものもあることを知っておきましょう。

また、貸金業者には信用情報機関を利用した消費者の返済能力の調査が義務付けられているため、私たち消費者の信用情報はすべての貸金業者の間で共有されています。

1つの金融機関で延滞してしまった情報は他の金融機関にも共有されるため、その後の新しい契約にも影響してしまうことを覚えておきましょう。

 

超過貸付の防止のポイント

  1. 総量規制という規制のため、基本的には年収の3分の1を超える借入れはできない
  2. 銀行からの借入れや住宅ローン・自動車ローンなど、総量規制の対象とならない借入れもある
  3. 貸金業者には、カードローンの審査の際に信用情報機関を利用して消費者の支払い能力を調査することが義務付けられている