医療保険・医療特約は、入院している間、ずっと入院給付金が支払われるわけではありません。1回の入院につき、何日まで支払う「支払い限度日数」が決められています。
30日・60日・120日など、商品ごとに異なります。では、何日のタイプを選べばいいのでしょうか? 入院データから探ってみましょう。
傷病と年齢によって平均入院日数が異なる
医療保険や医療特約には、1回の入院あたりの支払限度日数が決められています。
何日のタイプがいいかを考える上で参考になるデータがあります。厚生労働省が3年ごとに調査して結果を公表している「患者調査」です。表は、「傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数」の中から、主だった傷病と年齢を抜粋したものです。平均在院日数とは、入院日数と読み替えることができます。
平成23年のデータでは、全傷病・全年齢の平均入院日数は32.8日で、1カ月ちょっとです。
日本人の死因の第1位の病気であるがん、2位の心疾患、4位の脳血管疾患の3大疾病(特定疾病、重大疾病ともいう)の入院日数を見てみると、脳血管疾患による入院の長さが目立ちます。全年齢平均で93日、15歳~34歳は30.6日、35歳~64歳は55.4日、65歳以上の高齢者にいたっては104.4日と3カ月を超えています。
3大疾病を含む、日本人に多い高血圧性疾患と糖尿病、肝疾患、ウイルス肝炎、骨折による入院日数を年齢別に見ると、どの傷病も65歳以上の入院日数が長くなっています。
高齢になるほど、治療・回復に時間がかかり、入院が長引くということです。15歳~34歳が35歳~64歳より入院日数が長い病気は、がん、心疾患、糖尿病です。若い人でも、これら生活習慣病による入院リスクがあるわけです。
図表 傷病分類別にみた年齢階級別退院患者の平均在院日数
(傷病・年齢を抜粋)(単位:日)
傷病名 | 平均入院日数 | 15歳~34歳 | 35歳~64歳 | 65歳以上 |
---|---|---|---|---|
全傷病 | 32.8 | 12.1 | 26.2 | 44 |
がん | 19.5 | 15.7 | 15.1 | 22.4 |
心疾患(高血圧性のものは除く) | 21.9 | 24.7 | 9.2 | 26.1 |
脳血管疾患 | 93 | 30.6 | 55.4 | 104.4 |
高血圧性疾患 | 41.2 | 9.6 | 13 | 48.5 |
糖尿病 | 36.1 | 41.6 | 21.3 | 47.6 |
肝疾患 | 27.4 | 11.8 | 22.8 | 32 |
ウイルス肝炎 | 15.4 | 12.7 | 12.8 | 21.8 |
骨折 | 41.1 | 13.9 | 25.6 | 52.1 |
60日タイプでほとんどカバーできる
医療保険・医療特約の1回の入院あたりの支払限度日数は、30日、60日、120日などのタイプがあります。支払限度日数が長くなるほど、保険料は高くなります。生命保険会社は、保険料を多くもらわないと長く保障できないからです。
1回の入院とは、同じ病気・けがによる入院のことを指します。例えば、60日タイプの医療保険に加入している人が、ある病気で50日間の入院をしたとします。
入院1日目から給付される医療保険であれは、50日分の入院給付金が支払われます。この人が同じ病気が再発して入院した場合、180日以内は1回の入院にカウントされます。
ですから、仮に再発入院が20日間だったとしても、支払われる入院給付金は残りの10日分だけです。180日を過ぎてからの入院は、再発であっても1日目から給付されます。全く違う病気やけがによる入院は再発ではないので、1日目から給付されます。
近年、医療技術の進歩や国の公的医療保険制度の方針で、入院日数は短期化しています。それに合わせて、生命保険会社では、1入院の支払限度日数を短くしており、現在は60日タイプが主流です。
患者調査の結果を見ると、60日タイプでカバーできないのは、65歳以上の脳血管疾患と、表には載せていない精神及び行動の障害、神経系の疾患の入院です。ですから、通常の病気やけがの入院の備えは、60日タイプで大丈夫といえるでしょう。
ただし、患者調査はあくまで平均で、実際に入院したときに長くなるかもしれないリスクに備えたい場合は120日タイプを選ぶ方法もあります。
また、3大疾病、7大疾病(3大疾病+糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全など)は入院日数が延長される商品があるので、それらを選んでもいいでしょう。
なお、医療保険・医療特約には、通算限度日数も決められています。これは、保険期間中に、何度も入院給付金を請求しても、この日数まで支払ったら、それ以上は支払わないという限度のことです。730日、1,000日、1,095日などですが、現在は、1,000日か1,095日が主流です。
通算限度日数は、病気とケガで別々にカウントするのが一般的。ですから、病気で使い切っても、ケガが残っていれば、ケガ入院した場合は限度日数まで支払われます。
ちなみに、手術給付金については、支払回数に限度はないのが一般的です。