病気やけがで入院すると、かかった医療費の多くの部分は公的医療保険から給付されます。とはいえ、自己負担が全くないわけではありませんし、入院時の食事代や差額ベッド代、先進医療の技術料、入院にかかわる雑費などはすべて自己負担になります。

こういった出費に備えるのが医療保険・医療特約です。その必要額の考え方を整理しておきます。

入院時の医療費の自己負担のしくみを知っておこう

ちょっとした病気やけがでの通院でかかる医療費は家計費でまかなうとして、入院・手術となると医療費は多くなりがちで家計費からまかなうのは厳しくなります。

そこで、医療保険や医療特約で備えるわけですが、医療保障の必要額を考える際、公的医療保険の自己負担のしくみが関係してきます。

公的医療保険の自己負担の仕組み(図表)を見てください。入院・手術などでかかった医療費は、年齢・所得に応じた一定割合(1割から3割)の医療費を自己負担します。

自己負担額が高額になった場合は「高額療養費制度」から給付が受けられ、実際の自己負担額は抑えられます。

このほか、下記のような費用はすべて自己負担になります。

入院時の食事代の一部負担

1食あたり、原則260円(平成28年度から1食360円、平成30年度から1食460円に引き上げられる見込み)。

差額ベッド代

4人部屋、6人部屋などの大部屋に入院する場合は公的医療保険の対象になるので、特別な自己負担はかかりません。

しかし、1人部屋や2人部屋などの条件のいい部屋に希望して入院した場合、大部屋との差額料金(差額ベッド代)はすべて自己負担です。

差額ベッド代は病院ごと、部屋ごとに異なります。生命保険文化センターの「医療保障ガイド(2014年10月改訂版)」によると、1日あたりの平均額は5,820円。1日あたり3万円以上という部屋もあります。

公的医療保険対象外の特殊な治療

先進医療による治療を受けた場合は、技術料の全額が自己負担になります。先進医療の技術料は、数万円から300万円程度と、高額なものもあります。

入院時の雑費

入院には、寝具、タオル、下着、洗面道具、スリッパ、ティッシュペーパーなどの日用品を持って行きます。家にあるものを持って行く分にはお金はかかりませんが、新しく買うとなるとお金がかかります。

また、入院中にテレビを見る料金、見舞客が来たときの飲み物代、見舞いに来る家族の交通費や外食代、退院後の快気祝いなどもかかります。

これらを合計すると、自己負担額は数万円から数十万円に上ります。

図表 公的医療保険の自己負担の仕組み

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入院日額は1万円を目安に!

前項のような負担が考えられることから、公的医療保険の保障を考慮した医療保障の必要額は、職業・性別を問わず入院日額1万円を目安にすると安心でしょう。

それでは保険料が高くて負担が重くなるようなら、5,000~7,000円でもかまいません。入院時の自己負担額のすべてをまかなえなくても、家計は助かるからです。

自営・自営業の人は、会社員や公務員が受けられる傷病手当金はありません。傷病手当金とは、業務以外の理由で病気になったり、けがをしたりして入院または自宅で療養が必要になり、会社から給料をもらえないときの生活保障です。

休み始めて4日目から、最長1年6カ月まで、1日あたり標準報酬日額の3分の2の金額がもらえます。つまり、会社員や公務員は入院しても7割弱の収入が保障されているということです。

傷病手当金のない自営・自由業の人は、入院すると収入がなくなってしまうことがあります。そこで、収入を補てんする意味で、入院日額5,000円程度を上乗せして、1万5,000円は準備しておきたいものです。

医療保険・特約は、入院しないと給付金はもらえないので、自宅療養時の収入補てんはできません。そこで、入院、自宅療養のどちらでも保険金がもらえる損害保険の所得補償保険で収入補てんをするという考え方もあります。

また、会社員、公務員、自営・自由業の人に関わらず、月収51万5,000円以上の高額所得の人は、高額療養費による自己負担額が高くなります。

そのため、同じ医療費がかかっても、月収51万5,000円未満の人より自己負担額は多くなります。ですから、入院日額5,000円程度を上乗せしておくといいでしょう。