「先進医療特約」は、保険診療外の高度で先進的な医療技術のうち、厚生労働省が認定した先進医療を受けた場合に給付金が受取れる特約です。
高額な治療費に備えることができますが、給付対象となる治療は決まってきるので、その範囲と内容を確認しておきましょう。
「先進医療」とは?
近頃、「先進医療特約」つきの医療保険をよくみかけます。「先進医療特約」は、「先進的な治療」のうち、厚生労働省が認めた「先進医療」を対象にしています。
先進医療とは、厚生労働省が、保険診療(健康保険が使える診療)との併用を認めた「未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等」を指し、先進医療が受けられるのは、厚生労働省が定める施設基準に該当し、届出を行った医療機関に限られます。
通常は、健康保険対象の治療と対象でない治療を一緒に受けた場合には医療費総額が全額自己負担となってしまいますが、先進医療の場合は、健康保険が使える診療の部分は健康保険が適用され、先進医療部分は自己負担になる、という仕組みになっています。
図表1 先進医療を受けた場合の医療費の負担
例:総医療費が100万円、うち先進医療に係る費用が40万円だった場合
1)先進医療に係る費用40万円は、全額自己負担。
2)通常の治療と共通する部分60万円(診察、検査、投薬、入院料)は公的医療保険から給付があり3割自己負担。ただし、高額療養費の給付もあり、自己負担額は月額約83,000円に抑えられる(標準報酬月額28万~50万円の方の場合)。
総医療費100万円 | ||
---|---|---|
先進医療部分:40万円 (全額自己負担) |
保険診療部分:60万円 | |
7割:42万円 (公的医療保険制度からの給付) |
3割:18万円 (高額療養費適用後:約8.3万円) |
先進医療の種類
先進医療は、平成27年9月1日現在で107種類。先進医療のリストは、随時見直されるので、新しく加わる医療技術もあれば、外れる医療技術もあります。
先進医療にかかる費用は医療の種類や医療施設によって異なりますが、試みに1件あたりの平均費用を算出してみると、数千円程度のものもありますが、がんの治療法である陽子線治療や重粒子線治療の場合は数百万円に上ることがわかります(図表2)。
図表2 実施件数の多い先進医療
技術名 | 適応症 | 先進医療 総額(円) |
平均入院 期間(日) |
年間実施 件数(件) |
1件あたり 平均医療費 (円)※ |
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前眼部三次元画像解析 | 緑内障、角膜ジストロフィー、角膜白斑、角膜変性、角膜不正乱視、水疱性角膜症、 円錐角膜若しくは水晶体疾患又は角膜移植術後である者に係るもの |
28,763,512 | 0.5 | 7,458 | 3,857 |
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 | 白内障 | 3,582,299,056 | 1.3 | 7,026 | 509,863 |
陽子線治療 | 限局性固形がん | 7,684,923,300 | 12.5 | 2,916 | 2,635,433 |
重粒子線治療 | 限局性固形がん | 5,059,457,000 | 14.6 | 1,639 | 3,086,917 |
(厚生労働省「平成26年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」「先進医療の各技術の概要」より。ただし、「1件あたり平均医療費※」は、「先進医療総額÷実施件数」で筆者が算出したもの)
先進医療特約とは
先進医療特約は、先進医療を受けた場合の、高額な医療費負担に備える特約です。特約の保険料は大体月額100円程度で、先進医療にかかった金額が給付されます。
給付金額には限度額があり、2,000万円を限度とする保険が多いようです。1回あたりの給付金に限度額がある場合もあります。
毎月100円程度の保険料で高額な医療費負担に備えられます。保障の対象となるのは、「療養を受けた日時点」の「厚生労働省の定める先進医療」を、「厚生労働省が定める施設基準に適合する医療施設」で受けた場合です。
先進医療のリストに載っている医療技術であっても、条件を満たさない病院等で受けた場合は給付対象になりませんので注意しましょう。
また、保険期間中に新たに先進医療の対象となった医療技術は先進医療特約の給付対象になります。一方、以前に先進医療であったものが、療養を受けた日時点で先進医療ではなくなっていた場合は給付対象になりません。
すべての先進医療に対応できる特約ではありませんが、月々100円程度で高額な経済的リスクに備える、万が一の場合に治療の選択肢を増やすことができるのが先進医療特約の特徴です。