生命保険に加入するとき、現在の健康状態や過去の傷病歴などを告知する義務があります。告知が必要な理由や告知の方法、そして、正しく告知しなかったらどうなるかなど、告知・診査にまつわる知識を整理します。

告知・診査は加入者同士の公平性を保つもの

生命保険は、たくさんの人がお金を出し合い、そのうちの誰かが死亡や入院などのアクシデントに遭ってしまったときに、出し合ったお金の中から死亡保険金や入院給付金を出して助け合う制度です。

この助け合いのグループの中に、すでに病気にかかっている人がいたら公平とはいえません。病気にかかっている人の方が死亡保険金や入院給付金などを受け取る確率が高いからです。

そこで、生命保険会社では、「告知」という方法で加入者同士の公平性を保っています。告知では、現在の健康状態、過去の傷病歴(傷病名や治療期間など)、現在の職業などが問われ、加入者は正しく答える義務があります。

これが「告知義務」です。生命保険会社は、告知された内容で契約を引き受けるか、条件付きで引き受けるか、断るかを判断します。

病気や保険会社によって異なりますが、現在、医師による投薬を受けていても、医師にかかって病状や症状がコントロールされていると評価されることがあります。このような場合には特別な条件がつかずに加入できる場合もあります。

なお、保険種類や保険金額によっては、告知だけでなく診査が必要な場合があります。

告知・診査にはいくつかの種類がある

告知には下記のような方法があります。死亡保険については、保険金額によって診査も求められることがあります(生命保険会社によって異なります)。

●告知書(告知欄)への記入
質問事項などが書かれた告知書に被保険者が健康状態などを記入し、保険会社に提出します。医療保険、がん保険、少額の死亡保険、個人年金保険などで用いられます。

●健康診断書・人間ドックの結果などの代用診査
質問事項などが書かれた告知書に被保険者が健康状態などを記入し、健康診断書や人間ドックの結果書類と一緒に保険会社に提出します。死亡保険に適用されます。

●生命保険面接士による診査
質問事項などが書かれた告知書に被保険者が健康状態などを記入し、生命保険面接士が面談で審査を行います。生命保険診断士は被保険者の健康状態を確認する人のこと。死亡保険に適用されます。

●医師(診査医)による診査
質問事項などが書かれた告知書に被保険者が健康状態などを記入し、医師が告知書の内容を確認します。医師には、生命保険会社の職員の「社医」と、生命保険会社から委託を受けた「嘱託医」がいます。これも、死亡保険に適用されます。

なお、営業職員や保険代理店などに口頭で告げても、告知したことにはなりません。

事実と違うことを告知すると「告知義務違反」になる

もし、事実と違うことを告知したらどうなるでしょう? この場合、営業職員などからそのように告知するよう勧められたケースを除いて「告知義務違反」になり、契約を解除される可能性があります。

生命保険会社は、契約してから2年以内なら、保険契約を解除できる権利を持っているからです。もちろん、告知義務違反をした事実と因果関係のある原因で死亡・入院などをした場合は、死亡保険金・入院給付金などは支払われません。

告知義務違反の内容が悪質な場合は、詐欺による無効を理由として、死亡保険金・入院給付金などは支払われません。契約後2年を経過していても、契約を無効にされてしまう可能性もあります。

生命保険会社によっては、複写式の告知書を使って写しを送付したり、契約後に保険証券と一緒に告知書の写しを送付したりしています。事実と違うことを告知していたら、すぐに保険会社に連絡をして指示を受けましょう。

なお、一般の生命保険より告知内容が緩やかな「引受基準緩和型」の医療保険やがん保険、まったく告知をしなくてもいい「無選択型」の終身保険などもあります。

表1 医療保険の告知内容のイメージ
最近の健康状態 最近3カ月以内に、医師の診察、検査、治療、投薬のいずれかをうけたことがありますか。 いいえ はい
病気・ケガについて 過去5年以内に、病気やケガで、継続して7日以上の入院をしたことがありますか。 いいえ はい
過去5年以内に、病気やケガで、手術をうけたことがありますか。 いいえ はい
健康診断・人間ドックについて 過去2年以内に、健康診断・人間ドックを受けて、所定の臓器または検査の項目で異常を指摘されたことがありますか。* 健康診断・人間ドックを
うけていない うけたことがある
 異常なし  異常あり
身体の障害について 所定の身体の障害がありますか。* いいえ はい
がんについて
(がん診断治療給付金特約、
がん通院特約を付加される方のみ)
今までに、がんまたは上皮内新生物にかかったことはありますか。 いいえ はい
女性の方
(16歳以上)
過去5年以内に、妊娠・分娩に伴う異常で、入院したり手術をうけたことがありますか。 いいえ はい
現在、妊娠していますか(医師の診断や自分で行う妊娠検査で判明している場合も含みます)。 いいえ はい
*詳細は省略。