ドル建て終身保険は、外貨である米ドル建てで運用する終身保険です。円建てに比べて予定利率が高い分、終身の死亡保障を割安な保険料で備えられます。

保険料や保険金額、解約返戻金は為替次第で変動するリスクがあるものの、外貨投資にもなる保険商品です。

ドル建て終身保険のしくみ

ドル建て終身保険は、終身の死亡保障が確保できる終身保険の1種です。保険金額も保険料も、米ドル建てで契約します。

保険料は米ドル、円のどちらでも支払うことができます。米ドルで保険料が決まるため、円で支払う際には、為替の変動の影響を受けて、引き落とされる保険料は変動します。

保険金や、中途解約をした際の解約返戻金も米ドル建てですが、実際の受取りは米ドルか、日本円かどちらかを選ぶことができます。

常に為替の影響を受けるため、保険料を払う際は円高で、保険金を受取るときは円安の時であれば為替差益でメリットも大きくなりますが、その逆で為替差損になるケースもある商品です。

また、ドル建ての保険であるため、円⇒米ドル、米ドル⇒円に換える際に、為替手数料がかかる点もしくみとして理解しておく必要があります。

保険会社によっても異なりますが、通常、1米ドルあたり片道50銭から1円程度の為替手数料かかります。

図表1 ドル建て終身保険のイメージ図
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契約例:35歳男性 死亡保障100,000米ドル
保険料 月176.20米ドル
保険期間:終身
保険料払込期間:60歳
(A保険会社 2015年10月現在)

ドル建て終身保険の特徴

ドル建て終身保険の特徴として、予定利率が円建ての終身保険よりも高めであるという特徴があります。正確には、日本の予定利率が低いことによる金利差です。

同じ種類の死亡保障で比較する場合は、予定利率が高い方が割安な保険料となり有利と判断できますが、円建ての終身保険とドル建て終身保険を並べた場合には、為替変動の影響や為替コストなども加味して判断する必要があり、予定利率だけでは比較できない難しさがあります。

例えば100,000ドルの終身保険に加入し、亡くなった時点の為替が1米ドル=120円だったら1,200万円ですが、円高が進んで1米ドル=80円だったら800万円になってしまいます。為替変動リスクも理解して利用すべき保険です。

そのため、必要な死亡保障をカバーする場合は為替リスクのない円建ての終身保険に入り、ドル建て終身保険は2本目以降の保険、または資産運用を主眼に置いて入る保険と考えるとよいでしょう。

ドル建て終身保険はどんな人に向く?

外貨投資に主眼を置いて活用したい人

長期的に、米ドルに対して円の価値が下がる(=円安になっていく)と予測し、外貨投資の1つとしてドル建ての保険に入る人もいます。

長期にわたって保険料を支払い続ける形で外貨をコツコツ購入し続けているのは、いわば“ドルコスト平均法”と同じ効果があるといえます。

為替の動向を見ながら、必要な時期に中途解約をして円建てで解約返戻金を取り出して使うこともできます。中途解約をしない場合は、死亡保障として遺族に残すこともできます。

通貨分散のために活用する人

前項と似ていますが、こちらはリスク回避のために米ドル建ての資産を持ちたい人です。

ポートフォリオが円建て資産中心の人の場合、こうしたドル建て終身保険に加入することが、通貨分散の手段の1つにもなります。

子どもが将来、留学をする可能性が高い人

子どもが将来、海外留学をするかもしれないという人の場合、外貨を増やす手段としてドル建て保険を利用するのも一法です。万一、被保険者となった親が亡くなった時にも、外貨資産を残すことができます。

塩漬け外貨が多い人(それを相続対策に有効活用したい人)

大きな含み損のある米ドルを外貨預金などで保有し続けている人もまれにいます。ドル預金も金利が低く、ただじっと円安を待つよりも、ドル建て終身保険にして有効活用したいという人にも向きます。

保険の機能がつくほか、予定利率によっては外貨預金に置いておくより有利になる場合もあります。

塩漬けドルがあって、それを相続税対策に活用したい人も加入のメリットがあります。特定の人に外貨資産として残したい、あるいは法定相続人数×500万円の非課税枠を活用したいという人に向きます。

ドル建て終身保険はココに注意!

死亡保険金額を円で受け取る際には、為替の影響によって見込みと異なる場合もあります。為替の変動で、円にしたときに想定より低い保険金額になったときに何らかの支障が出る場合は、ドル建て終身保険の利用は避けて円建ての終身保険にした方がいいでしょう。

また、保険として利用する場合、保険金を受取る側にも為替の知識がないと、円高なのに円で受取ってしまい損につながるケースもあるかもしれません。「1米ドル=○円以上だったら円で受取る」など、判断基準を決めて伝えておく必要があります。

また、保険金を米ドルで受取る場合、しばらく使わなくても大丈夫なように、ゆとりある資産で利用することが大事です。