今や、昼間部に通う大学生の2人に1人が利用している奨学金制度。毎月決まった金額が本人の口座に入金されるため、学費・生活費に利用できるのが特徴です。
奨学金には卒業後に返済する貸与型と、返済義務のない給付型があります。奨学金は日本学生支援機構のほか大学、地方自治体、企業などで取り扱っていますので、利用する際は、事前に情報収集して比較・検討しましょう。
日本学生支援機構の奨学金は貸与型
現在、奨学金を借りている学生の約9割が利用しているのが日本学生支援機構(以下、JASSO)の制度。毎月、学生本人名義の銀行、信用金庫または労働金庫の普通口座に振り込まれ、卒業後に学生本人が返還する制度です。J
ASSOの奨学金には、収入や学力の条件が厳しい無利子タイプの「第1種」と、貸与の条件が緩やかで利子を支払う「第2種」があります。それぞれの貸与の条件の目安は、以下のとおりです。
大学に入学する前の申込みの条件
種類 | 利率 | 貸与金額(月額) | 額面収入の目安 | 学力基準の目安 |
---|---|---|---|---|
第1種 | 無利子 | 3~6.4万円 | 781万円 | 高校の成績が5段階評価で平均3.5以上 |
第2種 | 固定0.63% 変動0.1% |
3~12万円 | 1,124万円 | 高校の成績が平均水準以上 |
奨学金の利率は、民間金融機関の教育ローンの金利が2~3%台であることと比較すると断然低いといえます。
ただし、もし私立大学に入学して満額の奨学金(12万円/月)を借り続けると、4年間の貸与総額は576万円。卒業後は20年間、毎月2万5,550円を返し続けることになります。
大学卒業後すぐに正社員として就職できたとしても、初任給は額面で約20万円、手取り額は17万円~18万円ほどと考えると、一人暮らしをしながら毎月2万5,550円を返済するのは家計負担が重すぎるかもしれません。
給付型の奨学金は狭き門
貸与型に対して返還の義務がない給付型の奨学金は学生にとっても保護者にとっても非常に魅力的です。
それだけに利用するのは狭き門。給付型の奨学金は、JASSO以外の機関が取り扱っています。給付型奨学金の主なものを紹介しましょう。
大学の奨学金制度
優秀な学生を全国から獲得するために、独自の奨学金制度を設ける大学が増えています。返金不要の給付型に加えて、入試前に予約しておき、保護者の年収や成績基準などを満たした合格者に給付型奨学金が支給される予約給付型などがあります。
首都圏の私立大学では、収入や成績の基準もJASSOと同程度の条件で、地方の学生向けに4年間奨学金を給付するところもあります。目標の大学が決まったら入学前に必ず大学のホームページで確認しておくとよいでしょう。
地方自治体の奨学金制度
保護者が住んでいる自治体に奨学金の制度がないか調べてみましょう。自治体により条件はさまざまですが、月額で貸与されるタイプの奨学金制度を持つ自治体も数多くあります。
東京都では、私立大学医学部の学生向けに、6年分の納入金と月10万円の生活費を貸与してくれる制度があります。
卒業後は都が指定する医療分野で9年間東京都内の医療機関に勤務すると返還が免除されます。地方の医学部でも同様の制度がある自治体もあり、医学部を目指す学生は必見です。
企業の奨学金制度
企業が社会的貢献の一環として奨学金の制度を設けています。企業人として将来活躍する人材を育てる目的で、大学や学部が指定されていたり、論文や課外活動など成績や収入以外の審査も多くなっていたりします。
有名な奨学金として新聞奨学金制度があります。住居を提供され新聞配達や集金をしながら給与をもらい、4年間の学費の実費(上限あり)を給付してもらえます。
団体の奨学金制度
主に公益財団法人などが運営する奨学金の制度です。そのほとんどが給付型ですが、申込める学生の範囲は限られた場合が多いため、個々に調べておきましょう。
これらのJASSO以外の奨学金についても、JASSOホームページ(各大学の奨学金制度、地方公共団体・奨学事業実施団体が行う奨学金制度)から検索して調べることができます。
教育ローンと貸与型奨学金の違い
奨学金(貸与型)も教育ローンも、借りたお金を返さなければならないのは同じです。では、JASSOの奨学金と国の教育ローン、民間金融機関の教育ローンでは何が違うのか、比較してみましょう。
奨学金と教育ローンの違い
JASSOの奨学金 | 国の教育ローン | 民間金融機関の教育ローン | |
---|---|---|---|
借りる人 返す人 |
学生・生徒本人 | 主に学生・生徒の保護者 | 主に学生・生徒の保護者、兄弟、本人、配偶者など |
貸与額 | 4年生私立大学で毎月12万円まで | 4年間で1学生あたり350万円まで(海外留学資金は450万円) | 最大500万円まで、300万円までなど |
利率 | 第1種:無利子 第2種:固定金利0.63% 変動金利0.1% |
固定2.15%(母子・父子家庭、年収200万円以下は固定1.75%) | 変動で2%台後半から3%台が多い |
返済期間 | 最長20年。在学中は返済猶予(無利息) | 15年以内(母子・父子家庭、年収200万円以下は18年以内) | 最長10年など |
所得制限 | 給与所得者・4人家族・私立大学自宅通学の額面年収 第1種:781万円以内 第2種:1124万円以内 |
子ども2人の給与所得者の額面年収 890万円以内 |
最低年収200万円以上の安定した収入など |
奨学金や国の教育ローンは年収の上限があり、民間の教育ローンは最低年収に制限があります。“お金がないから学べない”ということがないように、教育の平等を目的に設けられているのが奨学金や国の教育ローンの制度だからです。
こうした違いから教育費が足りないと思ったら、まずは奨学金、次に国の教育ローン、最後に民間金融機関の教育ローン、、、また、奨学金と金融機関の教育ローンを組み合わせるとどうなるか検討してみましょう。
この3つタイプの違いをもっと詳しく知りたい方は下記のページで確認できます。