団体傷害保険は、企業の従業員等を被保険者として加入するケガの補償をする傷害保険です。

労災にプラスする保険には、政府労災保険の給付を前提にそれに上乗せして企業の損害を補償する労働災害総合保険と、政府労災保険の上乗せ補償を特約とした企業向けの包括的な傷害保険があります。

団体定期保険は、保険期間が1年間の定期保険で2つの加入タイプがあります。

団体傷害保険で福利厚生

団体傷害保険は、国内・国外を問わず、突発的な事故によって死傷した場合に補償する傷害保険のうち、企業などの団体が加入するものです。

就業中のみの補償に限定することもできます。傷害による死亡・高度障害や、入院・手術・通院を補償するほか、保険会社によっては病気による入院・手術を補償する商品もあります。

保険期間は1年のものが中心ですが、保険会社によっては1年未満の契約も可能です。保険期間終了後に加入内容を変更しない場合は、自動更新されるものもあります。

契約方法には記名式と準記名式があり、準記名式は、契約時に名簿が備え付けられていることを条件に記名を省略する方式で、保険料は割増が付加されますが契約手続きが簡素化できます。

団体傷害保険では、企業等の団体が契約者となりますが、保険料負担は団体とすることも構成員とすることもできます。

構成員が負担する場合には、一般的には企業等が保険料を集金します。企業等が構成員全員を対象として保険料を負担した場合、支払う保険料は福利厚生に関する費用として全額損金に算入されます。

企業等が一部の構成員だけを対象に保険料を負担する場合は、被保険者となる構成員への給与となることがあります。

保険金の受取人は、原則として構成員である被保険者本人(死亡保険金は被保険者の法定相続人)になりますが、保険金受取人を企業等に指定することができます。

企業等の団体が保険金を受け取って構成員に給付する場合は、あらかじめ構成員である被保険者から保険金受取人指定の同意書を提出してもらうか、災害補償規程などで死亡補償金や入院見舞金などを規定して構成員の包括同意をとる必要があります。

図表1 団体普通傷害保険の補償の例
死亡または高度障害 1,000万円
入院日額 3,000円
手術 30,000円
通院日額 2,000円
団体傷害(1000名団体割引20%)1名当たり 17,310円

労災上乗せ保険で福利厚生

労災にプラスする目的で加入する保険は2タイプあります。従来から各損害保険会社で取り扱われている労働災害総合保険と従業員の就業中の災害に備えた企業向けの傷害保険があります。

労働災害総合保険は、従業員等が業務上または通勤中に災害を被り、政府の労災保険が給付された場合に、労災保険に上乗せして保険金を支払うことで企業の損害を補償する保険です。

法定外補償と使用者賠償責任補償の2つの補償から構成され、いずれか一方でも契約が可能です。保険料は全額損金計上です。政府労災では十分に補償されないところをカバーできる任意加入の労災保険といえるでしょう。

図表2 労災総合保険の概要
法定外補償 企業が定める法定外補償規定(従業員に対し政府労災保険等の給付のほかに一定の労働災害補償を行うことを目的とする労働協約、就業規則、災害補償規程など)に基づく従業員等またはその遺族への補償を目的。死亡、後遺障害、休業補償、業務災害、通勤災害、後遺障害等級、休業日数等の認定については、政府労災保険の認定に従う。特約として通勤中の災害や、従業員等の遺族への葬祭費やお花代などの災害付帯費用の補償などがある
使用者賠償責任補償 企業が労働災害によって従業員等またはその遺族に対して法律上の損害賠償責任を負い、その金額が政府労災保険の給付額や企業が定める法定外補償規定などに基づく支払いを超える場合に、その超過額を補償。法律上の損害賠償責任に基づく慰謝料や、賠償問題の解決のために負担する訴訟費用や示談交渉に要する弁護士報酬等の費用などもカバー。

労働災害総合保険は、政府労災で補償されることが前提となっているため、軽微なケガ等で労災が適用とならない場合には補償されません。

そこで現在では、政府労災の上乗せ補償を特約でセットできる企業等の団体向け傷害保険が各社で販売されています。

傷害保険の補償を基本契約として、治療費や休業補償や事業主費用等が政府労災とは別に補償され、さらに使用者賠償責任補償で労災訴訟対応もできる保険となっており、近年は企業向けの包括的な傷害保険での労災対策が主流となってきています。

団体定期保険で福利厚生

団体定期保険は、企業の役員や従業員など団体の構成員の遺族の生活保障を目的とした、保険期間が1年の定期保険です。

「グループ保険」とも呼ばれ、団体傷害保険と同様に、全員加入と任意加入があります。

全員加入タイプは「総合福祉団体定期保険」と呼ばれ、団体が契約者となり、構成員全員が加入します。

保険金の受取人は、団体のほか構成員の遺族にすることも可能です。団体が保険金を受け取って給付する場合は、被保険者の遺族または被保険者がその内容を知っている必要があります。

団体が契約して保険料を負担し、保険料は福利厚生に関する費用として全額損金に算入されます。

団体が受け取った保険金は、弔慰金や死亡退職金などに関する規程に基づいて支払われます。

弔慰金や死亡退職金などが支払われないと保険金が支払われない場合があるため、あらかじめ規定しておく必要があります。

一方、任意加入タイプは「Bグループ保険」とも呼ばれ、被保険者である団体の構成員自身が契約し、保険料も自分で負担します。

保険期間は1年ですが、退職まで更新できるのが一般的です。給与天引きで保険料の支払いができるほか、団体割引が適用されれば保険料が割安になるメリットがあります。

保険料率は、年齢に関係なく一律の保険料とする場合と、5歳刻みで保険料が上がっていくなど年齢層でグルーピングする場合があります。

前者は、若手にとっては割高で、中高年層にとっては割安な保険料となります。

後者は、若い時は保険料が低く抑えられるものの、年齢の上昇によって保険料が上昇します。

Bグループ保険は、個人で契約する通常の定期保険に比べ、割安な保険料で大きな保障を得られるメリットがあります。

募集が年1回であることや、1年更新のため毎年保険料が見直されるなどのデメリットもありますが、団体に所属しているからこそ利用できる保険ですので、それぞれの状況に応じて上手に活用したいものです。

図表2 団体定期保険(Bグループ保険)の例

加入年齢 65歳6か月以下。本人・配偶者が対象
保険期間 在職期間中
保険金額 500万円~5,000万円
保険料 保険金額ごと(性別・年齢に関わらない)
配当金 あり(前年度の実績による)
特約など 年金で受け取り可能
審査・告知 告知のみ