平準定期保険は、保険期間を通じて保険金額が一定の定期保険です。その中で特に保険期間が長いものを長期平準定期保険といいます。

通常、一般的な定期保険は解約返戻金が少ないですが、長期平準定期保険は解約返戻金が積み上がっていきます。

保険料は損金算入が可能で、節税をしながら経営者や役員などの死亡保障および退職金を準備できる方法として広く活用されています。

保障を確保しながら退職金を準備する

企業は、経営の中心となる経営者や役員などのキーマンが死亡した場合、売上の減少や金融機関から借入れの一括返済を求められるなど、経営上の大きなリスクを抱えています。

長期平準定期保険は、キーマンの死亡リスクに備え、比較的低い保険料で大きな死亡保障が得られる保険です。

死亡リスクは加齢とともに高くなっていくため、通常は保険料も上がっていきますが、長期平準定期保険の保険料は一定です。若い時はリスクを超える保険料を支払うことで、高齢時の保険金を積み上げていく仕組みです。

保険期間は一般的な定期保険に比べて非常に長く、満期は99歳や100歳などに設定されているため、前払いする保険料も多く貯蓄性が高くなっています。

高齢になるに従い、積み上がった前払保険料を取り崩していきますが、退職金の準備として利用する場合、中途解約することで得られる大きな解約返戻金を原資として退職金に充当します。

解約返戻金は、保険期間満了時にはゼロになりますが、ピークの前後で比較的長い期間高水準を維持します。そのため、退職時期が予定していた時期より前後した場合にも柔軟に合わせることができます。

また、退職時の解約返戻率を高く設定するため、若い時の返戻率を少なくして解約返戻金を低く設定する低解約返戻金タイプが多く設計されています。

退職金準備プランは、退職時まで長期継続することを前提とした契約です。資金繰りの悪化などへの対応で早期解約して現金を得たい場合などは、通常のものより解約返戻金が少なるため注意が必要です。

図表1 長期平準定期保険のイメージ図
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平準定期保険の節税効果

長期平準定期保険は、支払った保険料の2分の1が損金と資産にそれぞれ計上されます。その条件として、保険期間満了時の被保険者の年齢が70歳を超え、かつ契約時の被保険者の年齢+保険期間×2が105を超えていることが必要です。

保険期間のうち、契約当初から6割が経過するまでの期間に損金と資産が計上されます。残りの4割の期間では、保険料は全額損金計上され、前半で資産計上された保険料を取り崩して損金に計上していきます。

保険料の2分の1が損金に算入されることで利益が圧縮され、結果として支払う税金が下がります。

簿外に積み上がった資産を解約する際、解約返戻金から保険積立金(前払保険料)を引いた金額が雑収入として課税対象となりますが、同額を退職金として支払うことで、実質的には非課税となります。

 平準定期保険の具体的活用プラン

具体的な例で見てみましょう。B社長は現在50歳で、20年後の70歳での退職を考え、図表2のような長期平準定期保険に加入したとします。

図表2 20年目に解約返戻金がピークを迎える長期平準定期保険の加入プラン

契約者 法人
被保険者 B社長
受取人 法人
保険金額 1億円
年間保険料 262万円
保険期間 50年
20年目の解約返戻率 96.50%

年間保険料262万円のうち、損金と資産が131万円ずつ計上されます。20年間の保険料は5,240万円、積み上がる解約返戻金は5,057万円(=5,240万円×96.5%)となります。

このとき、保険積立金として2,620万円(=131万円×20年)が資産計上されています。解約返戻金から保険積立金を引いた金額2,437万円(=5,057万円-2,620万円)が雑収入として計上され、課税対象となります。

予定どおりB社長が同じ年度内に退職し、同額の退職金2,437万円を受け取れば、雑収入と退職金が相殺され、税負担は軽減されることになります。

長期平準定期保険を契約することで圧縮された利益は、本来契約がなければ課税され、その分多く税金を納めていたことになります。

圧縮された利益がどの程度の節税効果があったかは、法人実効税率(800万円以上の所得に対する税率を33%として適用)を用いて計算してみればわかります。

利益圧縮部分の節税効果を加味した実質的な返戻率は115.6%(解約返戻金5,057万円÷(支払保険料5,240万円-損金算入額2,620万円×実効税率33%))となり、節税効果を得ながら有利に退職金を準備できる効果があることがわかります。

平準定期保険活用の注意点

このように、節税しながら簿外で退職金を準備できるメリットがある一方で、デメリットもあります。法人実効税率が下がり、結果として実質的な返戻率が低くなるリスクや、退職金として活用する前に資金需要ができ、低い解約返戻率で解約せざるを得なくなる場合などが考えられます。

長期平準定期保険の活用は、毎年利益が出ることが前提になっています。損失を計上した年度などは保険料が業績にマイナスの影響を与えますし、節税効果がなくなり、将来の返戻率を押し下げることになるため注意が必要です。