それではいよいよ実際の転職活動を開始していくことになります。ハローワーク、転職サイト、転職エージェント、直接応募いずれの場合も準備する書類はほぼ同じです。大きく分けると「職務経歴書」と「履歴書」になります、転職サイトなどの場合、入力したデータだけで済む場合もありますが、企業側から求められることもあります。
また、プラスアルファでエントリーシートや課題のようなものが提示されることもあります。その場合はそちらがより重視される選考材料となりますので、しっかりと取り組んでください。まずは、転職書類の中でも最も重要な「職務経歴書」について解説いたします。
職務経歴書を準備する
職務経歴書とはこれまで自分が行ってきた業務内容を効率的にまとまて、相手に理解してもらうための重要な書類です。同じような業種であっても他人と全く同じ業務を行ってきたということはありませんし、違う業種への転職を希望する場合は、これまでの自分の経験の「何」が転職先で活かせるのか、どういうスキルが役に立つのか選考側に理解してもらわないといけません。
何十人~何百人と応募がある中で、その人のことを全て把握し、面接で聞くことはとてもできません。この職務経歴書によって相手に分かりやすく理解し説得材料にしたもの勝ちの世界が転職市場です。
職務経歴書の書き方
職務経歴書はこれまで自分が行ってきた業務について、いかに自分が有能で転職先企業にとって採用すると利益があるのかを説明するためのプレゼン資料です。職務経歴3年の人には3年なりの20年の人には20年なりの経験があり、それをいかにして相手に伝えられるかが勝負になります。20年選手の職歴がスカスカであればそれは「自分がこの程度の人間です」と告白しているようなもの。書き方には注意しましょう。
職務経歴書は基本的にワープロ(ワード)で作成します。エクセル用のフォーマットをDLできるサイトもありますが、むしろエクセルは履歴書のほうで使うと良いと思います。職務経歴書作成のポイントは以下の通り。
- 見やすい
- 簡潔である(だらだら長文にならない)
- A4で2~長くても3枚
- 過度の装飾は避ける
これをもとに、ご自身が何をやってきたのか採用側が判断しますが、思いのたけを訴える気持ちはわかりますが、たくさんの応募者の書類を見なければいけないため、過剰に長いものはそもそも読む気がしない、流し読みされてしまう可能性がありむしろマイナスです。
それよりも簡潔でまとまった文章のほうが読みやすいですし、読むほうも頭が疲れません。物事を簡潔にまとめるスキルがあるということを暗にアピールすることもできます。分量はどんなに職歴のある人でもA43枚までにはまとめておきましょう。長ければよいものではなく、どの職務経歴をよりアピールできるのか内容に緩急をつけましょう。
職務経歴は分かりやすく
職務経歴書は分かりやすくと書きましたが、まず基本的に手書きはしないようにしてください。履歴書は手書きという人もいますが(これについては後で説明します)こちらは必ずワープロ打ちしてください。
現在の仕事においてPCを使わないことは(営業や技術系、販売系であっても)あり得ません。
- 分かりやすく自分のしてきたことをまとめられる
- 基本的なパソコンのスキルがある
- 読みやすい文章を作成できる
このことを証明するためにも職務経歴書は重要なものになります。
書き方として大切なのは、長文にならないこと、そして数字を多用して説得力を持たせることです。ただ「がんばりました。真面目にやりました」では小学生の感想文です。具体的で根拠のある業務実績を示す必要があります。
例えばある会社でルート営業を3年やってきた人がいます。その場合書き方としてNGなもの、適切なものを例として書いてみます。
NG例「△年より●●県の販売店に所属して、顧客先を周るルート営業をしてきました。努力もして顧客には評価されました」
OK例「△年~▲年 ●●県営業所勤務。ルート営業。これまでの顧客数を20%増加させ、社内評価も上位10%を獲得」
同じくらいの分量であっても相手が受ける説得力が全く違ってくると思います。同じことでも書き方によって加点要素にもなり減点要素にもなりうるということです。
また、ワープロで作成する場合も過度な装飾は不要です。パワーポイントで作るようなプレゼン資料にする必要はありません。分かりやすく読みやすくする程度の装飾で構いません。具体例を後で掲示しますので参考にしてみてください。
自己PRをしっかりと
職務経歴書で大切なことは「ネガティブなことは書かない」ということです。実際の人柄などは面接によって判断していきますので書類選考の段階で相手にマイナスの印象を与える必要は全くありません。
「ネガティブ要素を書かない」ことと「嘘を書くこと」とは全く違います。自分の職務経歴で良かったものをデコレーションして相手に良く見せるようにしましょう。
社内で表彰された(●人)
評価が上位10%以内だった
商品の販売数を30%増やすためのPR企画を担当した
など、具体的で数字が分かるものがあればそれを書きましょう。また例えば社内でごたごたがあり関連団体などに出向(左遷ともいう)させられていたことがあっても、これを肯定的な書き方にしましょう。
「業務拡張とテコ入れのため関連団体『○○』に出向。これまでにないシステムを取り入れて顧客を20%拡張。業務改善に成功」
と書けば悪いように取られません。本人は転職の直接的な原因となりはらわたが煮えくり返るような経験だったとしても、そこは大人になって抑えましょう。
転職が多い場合
転職回数が多いケースは注意しましょう。ネガティブなことは書かなくてもよいといっても、履歴書に嘘は書けません。架空の職歴を作っても保険の加入記録などで、これまでの転職回数や何か月その会社にいたのかが分かってしまいます。
もちろん転職回数が多いということは
・この人に能力がないのではないか?
・何か性格や人格に問題があるのではないか?
・自分の会社もしょせん「踏み台」としてしか考えていないのではないか?
という疑問を与えてしまうことになります。そういう印象を持つのは当然のことであり、特に30代未満の場合「本当にやっていけるの?」と思われてしまうのは仕方がありません。
仕方がないからといってそこで諦めてしまってもよくないので何とかしましょう。その場合のポイントは以下になります。
①職歴を全て書く
最悪なのは嘘がばれることです。転職が多くても全て書くのが大前提。これは覚悟を決めてください。
②それぞれの退職理由を書く
「続かない人」「問題がある人」という印象を少しでも減らすために、それぞれの職場を辞めた時の理由を書いてください。「自分に合わなかった」ことがほとんどでもそれなりの(嘘にならない)理由をつけること。何か目的があって転職をしたことをアピールしてください。
③各転職先での成果を示す
色々な職場を経験していることで様々なスキルが身についていることをアピールしましょう。即戦力で色々な場面に投入できることを理解してもらえれば採用にとってプラス材料になるかもしれません。
「CADも使えます」
「Accessでマクロを組めます」
「簿記検定2級です」
など、どういう場面にも役に立つゼネラリストということをアピールしましょう。
④今回の転職で最後にする
そんな気持ちがなくても「今回の転職で総決算にする」ということを書いておきましょう。相手をなるべく納得させるために具体的なプランなども合わせると良いかもしれません。
ただし、どうしてもネガティブな印象を与えてしまうことは避けられません。他の応募者よりも群を抜いて能力がある、企業研究をしていて熱意が伝わるということを見せつけて、ダントツで採用したい人になりましょう。そうした人材を断る企業はないはずです。
嘘をつかないこと
最後は嘘をつかないことです。ない経歴を作ることはもちろんNGですが、やったことがないことを書いても後から苦労します。システム部にいても管理しかしていなかったのに、実際にプログラムを組んだなどと書いてしまうと・・・、大変ですよね。
もし面接官がその分野に詳しい人だったら、聞かれて一発でアウトになってしまいます。できること、やってきたことを上手にアピールすることと、できないことをできると脚色することは全く違います。
転職できるように「あれもできる」「こういう経験もある」と書いてしまいがちですが、最終的には自分の首を絞めるので注意してください。正直に自分をアピールできるかが転職成功のポイントになります。
それでは、実際の「職務経歴書」がどのようなものなのか、例を見てみましょう。書き方がシンプルかつ具体的なものだと分かるはずです。
- 職務経歴書(悪い例)
-
O沢△世
私は2005年に○○銀行へ入社いたしました。最初に配属されたところが、本社管理部で主に銀行にあるATMへのお金の出し入れを担当していました。地味な仕事ではありましたが、しっかりとお金を扱うことが大切だと考えて、ここでお金の持ち方、運び方、数え方などを学ぶことができました。普通の人が数えるようなやり方ではだめで、銀行独特のルールやマナーなどを知ることができました。そこの部署で3年経験をさせていただきました。他の同期は2年で支店や総務などへ移動になりましたが、私はなかなか基本が身に付かなかったせいでしょうか、1年余計に経験することになりました。ただし、小さなことをコツコツと行うことの大切さと根気強さをここで勉強することができたので、どこへ行っても役に立つスキルだと思います。
次の部署は錦糸町支店になりました。錦糸町は墨田区にあり繁華街も近く色々なお客様が来店しました。私は窓口担当をしていて、しばしばお客様に怒鳴られることもありました。金策に困っている人が多く、融資の相談窓口は別にあるのですが、通常の預金引き落としの際に「もっと融資してくれることは無理か!」などと言われることが多く、その都度上司や担当につないでおりました。その意味では顧客対応や仲間とのコミュニケーション能力についても高いほうだと思おいます。ここで、我慢と忍耐の力を身に着けることができました。それも貴社で生かせると思います。
錦糸町支店で5年勤務をして、2012年から今の法人営業部に転属になりました。女性ということもあるんでしょうか、あまり大口の顧客の新規開拓は行わず、ルート営業的に主に化粧品やアクセサリーなど女性向け商品を扱う企業を中心に営業しています。幸いなことにどのお客様にも親切にしていただき楽しく営業させていただいています。
しかし、このまま今の営業を続けられる可能性もなく、また将来的には結婚も考えていますのでこの職場で良いのか考え、金融業ではない職業のほうが家庭との両立が可能だと判断し、今回応募させていただきました。取り立てて大きな資格を持っているわけではありませんが、簿記検定2級を持っているため経理については多少理解できます。その他事務処理能力は一般的な方よりも高いと自負しておりますので貴社の力になれると思います。その他、女性ならではの細やかな視点や気配りもあり、社員の皆様の活躍をサポートできるものだと考えています。
人格や性格も問題なく、今回の転職に当たり自分を総合的に評価していただきたく、応募させていただきました。これが私の職務経歴になります。
2005年 ○○銀行入社本社管理部所属
2008年 錦糸町支店
2012年 化粧品等営業部現在に至る
(1133字)
- 良い例
-
職務経歴書
○籐△太郎[経験職種] 企画、経営指導、政策提言
[職務経歴要約]
検定試験企画運営、中小企業向け経営コンサルティング業務、政策の立案を担当。特に検定試験受験者増のため、受験者の立場に立った各種受験案内の作成により検定試験受験者1割増に寄与し、これまでにないプロモーションを展開。また、経営指導業務では、地道な巡回(営業)活動をもとにして、経営者の要望に沿ったセミナーの企画により、多数の経営者に受講し、好評を得ている。●企画、経営指導業務(2003年4月~現在)
公益社団法人△△△において、検定試験企画運営、中小企業向け経営コンサルティング業務、政府・地方自治体への政策提言・要望活動を担当。特に検定試験受験者増のため、受験者の立場に立った各種受験案内の作成やテキストの装丁に留意し業務を行ったことにより、検定試験受験者1割増に寄与し、これまでにないプロモーションを展開した。
また、経営指導業務では、地道な巡回(営業)活動をもとにして、経営者の要望に沿ったセミナーの企画により、多数の経営者に受講し、好評を得ている。[所属歴]
2003年4月 入職。検定事業部に配属。
2009年4月 ○○支部に異動。経営指導員職となる。
2012年12月 ■■政策部異動
2013年12月 ▽▽支部異動 現在に至る業務内容とその実績
<企画業務>
○検定試験の企画
(業務)
・問題作成のハンドリング、問題校正、問題冊子の印刷発注
・テキスト執筆者との折衝、テキストデザイン、テキスト内容の校正
・印刷会社への発注、発行元出版社との折衝、ISBNコードの取得
・検定試験、テキスト作成のための運営委員会の企画、進行、運営
・検定試験広告の作成、各種メディアで広報活動
・大学、専門学校への営業活動
(実績)
・それまでにない雑誌媒体への広告掲載、テキストのレイアウトの工夫、紙質の変更、などによって、担当検定の受験者が毎年10%増、テキストの売上が毎年15%増加。
・広告イラストについて、デザイナーと直接交渉。デザイン料を1/5に削減。
・テキスト装丁の改良、複数の業者によるコンペの実施→経費削減
・営業の結果、試験を取り扱う専門学校が増加。受験者雑に寄与。
・試験問題作成体制の外部委託化→費用削減、職員の負担軽減、専門家が作成することにより問題の精密化。○中小企業経営者向け各種セミナー(研修)の企画・運営
(業務)
・テーマ、講師の選定、交渉、承諾を得る
・セミナーの告知PR、申込受付、当日の運営業務ほか一切にかかわること
・アンケートの集計、講師へのフィードバック
(実績)
・中小企業の経営者の声を、日頃より訪問し、そのニーズを把握し、トレンドに沿った効果的かつ斬新なテーマでセミナーを多数企画し、いずれも好評を得ている。
・講師の選定にあたっては、各講師に手紙を書くなどして「飛び込み」交渉を行う。
[企画セミナー例](以下のほか多数企画)
◆「萌えビジネスの今と未来」
◆「まだ間に合う!真夏のモテモテ!?クールビズファッション講座」
◆「段取り力でパフォーマンスアップ!仕事の効率↑↑(アゲアゲ)向上セミナー」
◆「カラーコーディネーターが魅せる!商品色彩術」
◆「『男前豆腐』、『涼宮ハルヒの憂鬱』からみる、売れるクチコミマーケティング術」
・企画後のアンケート結果もいつも好評(5段階で4.3が平均)○各種視察会、企業向け交流事業の企画・運営
(業務)
・企業の経営者、社員向け視察会、イベントの企画(企業工場、地域の名所の訪問)
・イベント時の運営ほか一切にかかわること(視察会時には添乗業務)
・異業種交流会の主催、運営
(実績)
・視察会では海上保安庁視察会を実施→社内で初の試み。
・中小企業社員向けイベントをアンケートに基づき企画・実施。
[企画事業例](以下のほか多数企画)
◆「『海猿』に会える!横浜海上保安部とキリンビール工場視察会」
◆「サンリオディストリビューションセンターと秋の青梅路満喫視察会」
◆「独身社員ときめき料理教室」<マネジメント業務>
○検定試験の運営
(業務)
・検定試験会場の手配(大学担当者との折衝)
・試験当日の監督要員の手配(人材派遣会社との折衝)
・検定試験当日の会場運営(突発的事項への対応含む)
・試験委員、派遣社員への説明・指示
(実績)
・各試験業務をルーチン化し、試験運営にかかわるマニュアルを大幅改訂。試験時のトラブルを減らすことに成功。
・試験運営時の派遣会社への全面委託の推進→一元的管理に成功、職員の負担軽減
その他、検定事業部在籍時は、派遣社員を4名部下に持ち、マネジメントを担当。業務を精査、ルーチン化し、残業時間などの削減に寄与。<コンサルティング業務>
○中小企業の経営指導、融資斡旋業務
(業務)
・中小企業の経営内容、財務内容等を総合的に勘案したコンサルティング
・小規模事業者向け融資制度の斡旋、小規模事業者への巡回・営業活動
・金融機関担当者との折衝
・創業計画書の作成指導、創業融資の斡旋
・創業融資担当、創業計画の立案
・中小企業診断士、弁護士等専門家へのコンサルティング依頼
(実績)
・融資の斡旋数は部内2位(昨年25件)
・社内ではじめて「創業支援融資」を経営指導の上実施。<政策業務>
(業務)
・経済法規委員会の運営(主として民法(債権法)、独占禁止法、会社法を扱う)
・財界要人向け発言メモの作成
・経済指標等をまとめた資料作り
(実績)
・法制審議会、民法(債権関係)部会を先取りし、専門家を選定。中小企業の意見を代表できる委員会の設置に寄与。<システム業務>
(業務)
・検定試験運営システムの構築(システム業者と協働、用件定義、システムプログラムの指示、フローチャートの作成などを行う)
・HPの大幅改良(顧客の立場に立った画面構成、SEO対策)
(実績)
・検定事業部内の会場管理システムの作成に関わり、全検定の会場管理システムの統合
に成功。試験運営に関わる時間を約30%削減。
・部署HPのヒット数上昇(3割)、新規顧客獲得数増加<ITスキル>
・Word ・Excel ・PowerPoint(資料作成)
・Access(フォーム、レポート、マクロの作成など)
・HomepageBuilderによるHP作成、HTML構文の読解以上
(2543字)
転職書類の書き方、送り方
サンプルを例に「職務経歴書」が書けたと思います。それらを合わせどのように先方に送れば良いのでしょうか?まず、メール送信、あるいは転職サイトのシステム上から送る場合は先方の指示に従ってください。DOCファイルの可能性もありますし、誤用を避けるためにPDF形式に変換してください、というところもあるかもしれません。その場合はその指示に従ってデータを送るようにしてください。
履歴書の書き方
履歴書ですが、求人先から指定のフォーマットがある場合はそれに従うようにしてください。そうでない場合は自分で見つけてくるわけですが、良く問題になるのが「手書き」か「ワープロ打ち」かです。どちらが良いかについてはネットを検索しただけでも両論あります。
それぞれの特徴として
ワープロ:修正やコピーが簡単。1度作ってしまえば応募ごとに多少修正するだけで済む。一方で無機質な印象があり快く思わない人もいる。
というものがあります。「なるべく手書きで」とアドバイスする人は、採用側にこうした価値観がある可能性からリスクヘッジのために時間をかけてでも手書きすべきと言っています。一方で「手書きしか受け付けないような価値観の会社=旧態依然とした日本のブラック企業」だからそんな企業は応募する必要はないという意見もあります。
どちらもなるほどと思うもので、転職希望者はまずここで悩むと言われています。ここを読んでいる皆さんなので私のアドバイスはこうです。
「ワープロで作成してください。ただし、既存フォーマットを使用しても良いですが、より見やすいようにアレンジしてみましょう」
自分の職務経歴を上手にまとめることが要求される職務経歴書に対して、履歴書はご自身のこれまでの生き方や価値観を表すものです。したがって、単に枠を埋めるだけでなく、正確に該当欄を埋めていくことが求められます。
意図せずともどこか抜け落ちてしまうことがあります。職務経歴の場合、記載漏れは「●●をしなかった」というだけで済みますが、履歴書の場合はご自身のこれまでの生き方に「空白期間」を作ってしまうことになり、それが伝わるとマイナスイメージが大きくなります。
ワープロで書いてくださいというのも、時間的な負担軽減もありますが修正のしやすさ、推敲見直しのしやすさから考えると、手書きよりも優れているからです。手書きの「一発勝負」で真剣に書くのも良いですが、人間のすることですからミスはあり得ます。そうした観点からワープロをお勧めします。
もちろん手書きの履歴書を用意することについて否定するものではありません。ない、「手書き」を指定してきた場合、企業研究をしてみましょう。旧態依然とした企業のようならそういう価値観の場合があります。「残業は当たり前、上司より早く帰るなんてとんでもない、朝は30分速く出勤」のようなブラック企業的価値観のリトマス紙として活用しましょう(この場合は反応アリです)。
一方IT化された企業や外資系企業が手書きを指定してきた場合は、ある意図があるのだと思います。こうした企業では手書きで文書のやり取りを日常業務で行うことはあまり考えられないからです。個人として物事に集中できるのか、細やかさがあるのかなどをそこで確認したいかもしれません。心配なら転職エージェントに相談してみると良いでしょう。
履歴書についての見解はこうです
・指定あり→指定に従う(ただし手書き指定の場合は、その企業をよく観察する)
・指定なし→ワープロできちんと書く
でよろしいと判断します。ワープロだから落とすようなところは初めから個人の能力など大して評価しないところだと思い、「こちらから願い下げ」という気持ちでいると良いでしょう。実際、このサイトを見ている方の中でそんな古い価値観を持っている方は殆どいらっしゃらないと考えています。
封筒の入れ方
書き方完全にマニュアルになってしまうので簡単に。
- 封筒は大きめ(できれば折らずに済むか2つ折り)
- 書類はクリアファイルに入れる
- ①添え状②履歴書③職務経歴書④その他(指定があるものがあれば)の順に入れる
- 封筒の表紙には「履歴書在中」と書き、赤ペンで□で囲む
これを守っていただければ大丈夫です。
添え状、送り方
添え状は簡単なもので構いません。「○○と申します。貴社を応募させていただきます・よろしくお願いします」という内容をもう少し伸ばして書きましょう。もちろんワープロでOKなので一度定型を作ってしまえばそれを使いまわしていただいて結構です。
郵送することになりますが、余程「直接応募」で急に見つけたもので締め切り間際でない限り普通郵便で大丈夫です。受付期間の最初に出す必要はありませんが、締め切り間際に速達で駆け込むと、スケジュール能力がない人と判断される恐れがあります。そうではないのに速達で送ると、金銭感覚がどうなの?と思う人は思うかもしれません。
書留は大丈夫だと思います。心配ですし、企業が1日に受け取る郵便物には書留も多いので印鑑を押す手間もわざわざ発生することもないでしょう。個人的には簡易書留で十分だと思います。
転職書類を郵送する場合、これで準備が整いました。いよいよ選考に入りますが、選考全体を通じての流れを転職サイトから見ていきましょう。
転職サイトの利用法
ここでは、転職活動の中心となるであろう転職サイトの利用法について詳しく説明いたします。意外と知らない機能もありもったいないです。これを駆使して転職活動の成功につなげましょう。
履歴書、職務経歴書の登録
転職サイトへの登録は無料です。有料のものはないと思ってください。どれくらいハイクラスの求人が多いサイトであっても登録するだけならば費用は発生しません。しかし、そこにある求人にご自身が応募して選考を通るかどうかは別の話です。それだけにサイトへ登録する内容が重要になってきます。
何よりも重要なものが履歴書と職務経歴書です。上でも書きましたが、これを元に企業は一次選考を行います。やっつけではなく、時間をかけてじっくりと書きましょう。WEB上での作業になりますので途中保存も可能ですし、書き直すこともできます。サイト利用中であってもより良いものに手直ししていくことができますので一度登録したらそのまま放置ということがないようにしましょう。
書き方については上で説明したことを守ってください。特に転職サイトの場合、文字数の上限が決まっている場合もあります。過剰になっては好ましくないわけですが、転職サイトの場合はかなり文字数が制限されているところがあります。内容を上手に取捨選択し「嘘がない範囲で訴えたい内容をPR」すると良いでしょう。
良くやりがちになるのは、ご自身の職務経歴を最初から書いていって文字数がなくなり、直近の最も企業が重視しそうな職務経歴が書けない、書く量が少なくなってしまうということです。これを避けるためには時系列ではない職務経歴書の書き方を参考にしてください。
また、WEB上では文字の装飾や加工ができません。テキストとしての文字をいかにして強調できるかのスキルが重要になります。つまり
「 」【 】『 』≪ ≫ ● ◆ ※
といった記号を上手に活用して見やすい職務経歴書を作っていかないといけません。
履歴書については文章として書くというよりもタブを選択する、該当箇所にチェックを入れるなどしてご自身のパーソナル情報を登録していく形になります。繰り返しますが、嘘を入力してはいけません。
転職回数が多い、職務経歴に空白がある場合でも正直に入力をお願いいたします。年収については概算で構いませんが、言うまでもなく翌年の住民税や社会保険などで転職先の人事は掌握します。500万円なのに800万円と入力してしまうと慎重な人事だとばれてしまいます。
職務経歴や学歴の詐称と比べるとダメージは低いと思われますが(転職先で見合った働きをしていれば良いわけですから)やはり大幅な詐称はやめておいたほうが良いと思われます。ただし、年収条件があり、例えば年収800万円が条件だが770万円しかない場合などは、一時的に800万円に変えて応募してすぐに戻すというやり方も完全に否定されるものではありません。不安ならば面接まで進んだ時に理由を言えばよいです。
転職サイトの場合「婚活サイト」のように証明書の提出は求められません。婚活サイトでは
・住民票
・年収証明書(源泉徴収票や住民税の課税証明)
・最終学歴の卒業証明書
・独身証明書
などが必要になりますが(サイト上に画像をアップロードする、ないしサイト運営元にFAX、郵送します)、転職サイトの場合は必要ありません。転職先で前年の源泉徴収票を見せろということもあまり聞いたことがありません。かといって何を登録しても良いわけではないので注意してください。
応募企業を厳選する
転職サイトでは業種ごとに豊富な求人が掲載されています。クリック1つで応募できますので、1回に複数、多数の企業へ応募することも可能です。たくさん応募してしまうと企業の管理ができなくなってしまう反面、他の転職者も応募してきますからあまり絞っても選考に進める可能性は低くなります。どれだけ優秀であってもある程度「書類選考」で落とされてしまうことは予想しないといけません。
どこの転職サイトかによって登録されている業種に差があるのも上で書きました。興味がない業種にたくさん応募しても意味がありませんよね。そこで多数の求人の中から「厳選」していくことが大切になります。
どのように厳選して行けばよいのか。色々なアドバイスがあると思いますが私は以下のような方法をお勧めします。
・本命企業4割
・保険をかける滑り止め企業4割
・せっかくなので応募してみたい他業種2割
本命と滑り止めは分かりますが他業種を応募する意味があるのですか?と疑問がわくと思います。確かに忙しい転職活動において余計な手間と時間は不要に思えます。しかし、他の業種を見られるのはこの時くらいしかありません。実際に行く気がなくても面接などでご自身の思わぬ点を評価してくれる可能性がありますし、「こういう働き方や仕事もあるんだ」と見聞を深めることもできます。
あくまでおまけですので2割としましたが、そこで興味がわく、「ひょっとしてこっちのほうが向いているのではないか?」と思えば応募数を増やしてみましょう。新しいものに触れることは新鮮な刺激になります。
これが転職サイトではなく、転職エージェントの場合は「売れる」企業をコンサルタントが勧めてくるため(事実そうしないと決まらないので)あまり個人が「遊ぶ」要素はありません。転職サイトならばそれができます。色々な業種を見るだけでも良い経験になります。
応募数ですが数十となると収拾がつかなくなります。やはり1回に10社までにとどめておき、その書類選考が一段落したら状況を見て追加していきましょう。「本命」の求人が出る前にある程度「予行演習」として似た仕事の企業に応募してみるもの1つに手です。面接などで聞かれそうな内容が分かるかもしれません。本命の選考に入れば「申し訳ないですが、ご辞退いたします」とすればOKです。人生がかかっているのでドライに行きましょう。
企業特集の見方
転職サイトには「残業のない企業特集」「ボーナス年3回の企業特集」「未経験者関係の企業特集」など項目を作って求人を特集していることがあります。「残業がない、よしこれに応募しよう」と即断してよいのでしょうか。ここは一歩踏みとどまってよく求人内容を検討してみてください。
こうした特集が組まれる企業には2種類あります。本当に良求人で特集に名前を出すことで一緒に登録されている他企業への波及効果が期待できるものと、人気がないため求人サイトにお金を払って特集に入れてもらう場合です。残業がないといっても実際のところはどうか分かりません。部署によって労働環境が大きく変わることは皆さんが一番ご存知のはずです。
特集企業に10社あれば、玉石混合だと思ってください。「玉玉玉玉玉石石石石石」ならまだ良いのですが、「玉玉石石石石石石石石」かもしれません。企業特集の内容をよく見て玉が多そうな特集なのかそうでないのか判断をお願いします。
ここまで読んでいただいた皆さんならお分かりだと思いますが、「未経験者歓迎」=「誰でもできる」=「代わりは誰でも良い」=「離職率が高い」というように自分からブラック企業だと名乗っているようなものです。そういう罠には引っかからないようにしましょう。
同じようなものとして
「若手が多いフレッシュな職場」=みんな辞めていくので年齢が高くならない
「自由闊達で上下の区別がない」=組織の理論を超えて介入してきます
「サークル活動やプライベートでの交流も盛ん」=休日も会社に拘束されます
など、分かる人には分かるワードが転職サイトにはちりばめられています。それを読み解き、ブラック企業特集の罠に陥らないようにしてください。
極めつけのブラックワードを教えます。「昼食支給」です。これがあった時点で応募してはいけません。社員食堂は問題ありませんが(むしろ優良企業です)、「支給」とあったらダメです。「仕出し弁当」などとあればブラックどころか漆黒企業です。要はエサを支給するから昼休みも席に着いて仕事をさせるという意味です。養鶏場の鶏にあなたはなりますか?
社員食堂あり:◎
昼食代補助:◎
________________(越えられない壁)
昼食支給:××
と考えてください。
そういうことも読み取ることができるのが転職サイトの良いところです。よく研究してください。
企業研究のやり方
実際の選考に入る前に必ずやっておいていただきたいことが「企業研究」です。新卒の就職活動の際もある程度行ったことがある方が多いと多いと思いますので、細かいことは省略いたしますが、転職の際にもやはりこれが重要になります。
新卒と転職では企業研究も異なる
転職の場合、新卒と異なりすでに何社かで働いたことがあるわけですから、会社組織というものを知らないというわけではないはずです(ですよね!)。ということは新卒と比べて相手が聞いてくる内容も深くなる可能性があります。
「未経験ですがやる気はあります!」
「御社の業務内容についてはしっかりと勉強したいと思います!」
のような態度は全く通じないと思ってください。逆にこの程度で採用される会社であれば、誰でもいい、使い捨て上等のブラック企業である可能性が高いです。
経験者採用をするわけですから、実際の応募先企業の事業内容とご自身の経験・スキルを関係させて、いかに自分が有用な存在であるかをアピールしないといけません。
「弊社の業務の●●についてどのようにお考えですか?」と聞かれたときに、「●●は過去の私の経験上、▲▲をしておりましたので、例えば~のような場面ではその経験を生かすことができるはず。確か御社の●●は業界第2位、過去10年で2倍に伸びていますよね」のようなことを返せないといけないわけです。
「えーと」「これからよく勉強したいと思います」では通用しないと思ってください。また、新卒の就職活動と比べて転職の場合は応募企業数も少なくなりますから当然1企業当たりの情報も深く知っていないといけません。「しょせん滑り止め」的なニュアンスが伝わると非常に不利になります。
企業研究の内容
今さら細かく言うことでもありませんが、企業研究とは応募先の企業についてその事業内容や財務体質などを事前に知っておくことです。具体的には、
「企業理念」や「社風」「組織体制」(総務部と人事部と営業部と・・・があり)「主軸の商品」「今後の事業展開の方向性」などについてチェックをしていきます。当然、平均勤続年数やボーナスの有無/月数、財務体質、上場の有無などについても知っておくと良いでしょう。面接で聞かれるのは前半部分ですが、後半部分を知っておかないとどういう企業なのか分からなくなります。
例えばその会社の人事がどういう組織上の位置づけにあるのか、確認してみましょう。
通常、人事は独立して人事部として存在するのか、総務部などに人事課として存在する場合が多いと思います。この場合、現場の人事担当者は人事部長なり総務部長になります。ところが会社の組織図で、人事が社長直属の機関であったことが分かるとどうでしょうか。この場合、良く解釈するとトップの意向がスピーディーに反映されるということですが、逆に社長の独善的な人事がまかり通っている可能性もあります。
このような会社ではボーナスの有無や、いつ出るのか、それが月給の何か月分なのか社長の気まぐれで決定するかもしれません。さらに、露骨に人によって差がつけられることもあります(能力ではなく社長の好き嫌いです)。不服を申し立てたくてもそのための機関がなく、そもそもそういう組織では一発で飛ばされる、解雇される可能性もあります。
財務内容など会社の経営基盤の確認とともに、内部の権力構造がどうなっているのかを確認するのも企業研究の大切な役割です。賢明な皆さまですので、出ている情報からその内部をプロファイルすることも十分に可能であると考えます。
企業研究のための情報入手
内部資料を入手するのはこの段階では無理でしょうから(リスクもありますし)、外部に公開されているものから情報を取捨選択していくことになります。具体的には以下の方法を試してください。
①転職サイト・企業HP
一番公式のものです。企業理念やトップの考え方、会社組織の概要などを知ることができます。過去に中途入社した人のインタビューが載っていることもあります。言うまでもないことですが、オフィシャルなものなので悪いことは言っていません。社員も本音は言えていないと解釈してください。
でもそこからでも内情が分かる可能性があります。例えば写真で皆一様にバッチなどをつけている場合、これは体質的に民主的ではないですよね。些細なことから「おかしい」と思える感度が大切です。
②新聞・業界紙
業界動向や新商品の販売などを知るにはこちらを活用しましょう。総合誌であれば記者の主観や分析も入っていますが業界紙の場合は、基本的に良いことしか書かれていません(業界を盛り上げるのだから当然ですが)。その辺りを割り引いて考えましょう。
業界全体の動向や新製品発売のニュースなど旬な情報をキャッチアップできる。志望する業界が決まっており、専門知識を習得したいときなどに役立つ。
③会社四季報
勤続年数や給与などを知るにはこちらが役に立ちます。ただし、全ての企業が掲載されているわけではありません。業界の平均値やトップ企業がどのくらいなのかを知るのに役立ててください。
業界や企業の情報を客観的に判断する材料を得られます、会社概要や業界内でのシェアなども知ることができます。転職活動を始めるにあたり、業界の全体像やビジネスモデルなどを知りたいときなどに役に立つといえます。出版されているものなので脚色は少ないといえるでしょう。
④イベント
合同会社説明会などで人事担当者に直接聞く方法もあります。ここで熱心に質問して顔と名前を覚えてもらう方法もあります。ただし、合同会社説明会は一部の優良企業で釣ってあとの大多数はブラック企業です。意地悪な人だとあえてここで人事が話しづらそうなことを聞いたりするようです。
⑤口コミ
ネット上の掲示板などで口コミを聞くのもありです。匿名ですからいいこと、悪いこと、あること、ないこと、作り話・・・織り交じっています。本当の情報をどうやって見極めるのかご自身の眼が問われます。匿名掲示板だけでなく、就職用の口コミサイトもあります。後者のほうが比較的信頼度は高いようですが、あくまで参考材料です。
オフィシャルな情報と、口コミなどアンオフィシャルな情報、そして写真などから読み取る情報を組み合わせてその企業がどんな会社なのか、自分の転職先としてふさわしいのか判断をしていきます。
むやみに応募しても良いことはありません。経験者採用なのですから情報の取捨選択や
判断もプロであることを意識して、企業を研究してみてください。