02転職条件を決定する

 

ご自身の中で「転職する!」と決心がつけば、いよいよ具体的な転職プランを考えていきます。ただ、この段階は具体的に会社を辞める、転職サイトに登録するなどを行う前段階です。色々と自己分析を行い、「時期尚早」だと判断できれば、中断することは可能です。周到に準備を行う期間だと考えましょう。

このタイミングで転職しないと言う結論になった時も、条件面を整理しておくことで、転職活動を再開するときに準備期間を短縮できます。ただし、「どっちつかず」だと結局うまくいかないことが多いので、一気に活動を開始してしまったほうが後悔はないと思います。それでは、転職条件をどのように設定していくのか考えていきましょう。

自分がなりたいキャリアプランを整理する

まず行っていただきたいことが、ご自身のキャリアプランの整理、設定になります。漠然とした問題で「良く分からない」という人もいらっしゃるかと思います。「キャリア」と言う言葉自体漠然としていて分かりにくいということもありますが、ここではその定義についてくどくどと述べることは致しません。ざっくり言うと以下のようなことを行ってください。

5年後、10年後の自分の地位を見通してみる

転職をするのですから、今の職場では実現できない「何か」が存在するはずです。それが社内的地位にとどまるのか、対外的な資格の取得や知名度の向上などご自身の名声に関わるものなのか、収入の具体的金額なのか、人それぞれであると思います。しかし、ここで設定していただきたいキャリアプランは、それら合わせてご自身の職場環境が、転職によってどのように好転させることができるのかのロードマップを設計することになります。

具体的には、以下のようなものを設計してみてください。

・新しい職場での地位

転職によって課長→平社員になってしまっては残念なことになってしまいます。もちろん、現在課長職にあり、それが激務すぎる、実質「名ばかり管理職」にある人がそれを脱するために転職を行うことについては問題ありません。そうではない場合は、着実に転職先で社内の地位を高めていけるのか、あるいは、しっかりと安定したポストに就くことができるのか、企業研究をしながら見通してみましょう。

ランクアップばかりが正しいキャリアプランではありませんので、会社に振り回されるようなことにならないよう、人事制度や昇格などがきちんと定められているところを見つけてください。安定しているのであれば、昇格をせずに地位に「留まることができる」(降格ではありません)転職先を見つけると言うのも1つのやり方になります。

「キャリアを上げていく」
「安定した地位に長期間いられる」

いずれの道となる転職なのか、この段階でしっかりと意識しておくことが大切です。

・収入と労働負荷のバランス

過重労働で残業代も出ないような「ブラック企業」は持っての他ですが、「労働時間は短いが収入は高い」という職場はなかなかありません。少しでも労働条件の良い職場への転職は大きな動機ですし、費用対効果で現在よりも「割がいい」職場も存在していることは事実です。そのような職場を見つけられれば言うことなしですが、結果としてベストな選択ができない可能性もあります。

転職は今よりもベターな職場を探すことでもあります。より「まし」な職場がどこなのかを見つけるためにも、キャリアプランとして「収入重視」なのか「ライフスタイル重視」なのかはっきりさせておきましょう。

条件の異なる2つの会社から内定が出た場合、そのご自身の価値観によって判断することができます。役職が上がれば労働時間が短くなりがちなのは日本企業の特徴ですが、会社によっては「上司が率先して残る」という習慣があるかもしれません。まして、転職で途中から入っていくのですから、そうした習慣を破ることは難しいでしょう。

収入とワークライフバランスの両立は可能ですが、全ての会社でそれを実現できるのかどうかわかりません。ベターな選択をするために、どちらを「より」重視するのか決めておきましょう。そうしないと結果として両方得られないという最悪の選択をしてしまうことになります。これでは転職した意味がありませんよね。

キャリアチェンジになるのかそのまま経験を積むのか

次のキャリアプランの問題として、転職がキャリアを継続できるものなのか、キャリアチェンジになるものなのか、はっきりさせるということが挙げられます。つまり、転職後の職種が現在のものなのか、そうではない別のものになるのかと言うことです。

現在営業をしている人がいます。自分が営業には向いていなく苦痛であり、結果も残せていない。だからそのまま営業を続けていくのは難しいため転職をして、事務職になりたいということも考えられます。向かない仕事にいつまでもいても良いことはありませんから、転職の同機には十分なり得るものです。

ただし、この場合はこれまでのキャリアから新しいキャリアとしてリセットし、再スタートを切ることになります(もちろん、これまでのものが無駄になるということではないですが)。

一方で同じ営業でもこの仕事に向いているという自覚があり、より積極的に営業ができる(裁量が大きい)職場に転職を希望する人もいるかもしれません。この場合、キャリアは継続していくことになります。

「キャリアを継続してその価値を高めていく」
「キャリアチェンジをしてより自分の能力を発揮できるものに変える」

いずれかの目的で転職を行うのかが重要です。それを意識しないと「とにかく採用してもらえるところで『何でもやります』と言って転職した」という結果になりかねません。そうした意識で転職できるところは、転職者を使い捨てのコマとしてしか見ていないかもしれません。やはり、ご自身の価値を捨てることなく、どう生かしていくことができるのか、それをキャリアに反映させられるのか、重要なポイントになります。

その会社に骨を埋めるのかさらに飛躍を目指すのか

キャリアプランを考えていくうえでもう1点、重要な判断材料があります。転職が今回1回のものなのか、あくまで通過点として考えるのかです。職種などにもよりますが、転職者が多く、平均在職年数が短い職場は、ブラックの場合以外にもキャリアアップ、ステップアップとして利用する人が多いところの可能性もあります。

ご自身が転職先で(環境が良ければ)そのまま勤め上げることを希望するのか、さらなる高みを目指すための通過点と捉えるのかで、転職先の選び方も変わってくる可能性があります。上記のような職場の場合、勤め上げることを希望する人は結構大変かもしれません。雰囲気の問題もそうですが、雑務や労働組合活動などの負担が回ってくる可能性があります(通過点として考えている人はその会社がどうなろうが知ったことではないからです)。

「この会社に骨を埋める」
「キャリアアップの『踏み台』にする」

どちらであっても正解、不正解はありません。最終的に満足できた人が正しいということになります。自分の性格やタイプ、価値観などを良く自己分析してください。

「今の会社はキツイので安心して働ける職場で長く頑張る」
「今の会社にいては自分がだめになるので、より高みを目指すために転職する」

いずれも素晴らしい転職理由です。ご自身の価値観にもよりますが、どちらのタイプなのかはっきりさせましょう。そうすることで転職活動の際も企業を絞り込みやすくなります。

キャリアプランが明確になれば、手当たり次第に求人に応募するということもなくなり、どういった職場に転職したいのか次第に分かってくると思います。

希望する年収、雇用条件を明確にする

どういったキャリアプランにしたいのか、そのグランドイメージができれば、次は実際の待遇について考えてきます。キャリアアップにつながるとはいえ、労働環境が厳しければそれに耐えることができないという可能性も存在してしまいます。やはり、収入と労働条件の問題は避けて通ることはできません。

転職先での収入についてどう考えるのか

収入、特に年収ベースで考えるとその「業種平均」と言うものが存在します。各種転職サイトに掲載されているものですが、ご自身が希望する業種の平均についてまず理解しておきましょう。一般的には 技術職>営業職>事務職と言われていますが、何を取り扱っているのかによっても変わります。

ご自身の職務経歴と興味関心を合わせてどの業種に応募するのか考えておきましょう。一般的に転職先での年収についてどのように考えればよいのでしょうか?

これについては色々な議論があります。
「年収が下がってでもキャリアを積むために転職すべきだ」
「年収が上がらない転職は意味がない」

ここではこのように提言したいと思います。

『少なくとも年収が下がる転職はすべきではない。ただし劣悪な労働環境から脱出する場合を除く。』

上で述べてきたように、ご自身の心身を悪化させるような労働環境から身を守るために行う転職の場合は、一刻を争いますので多少年収が下がっても転職を成功させることを優先させてください。しかし、そうではない場合は焦る必要はありません。少なくとも年収が減るという事態は避けるべきです。

銀行のように1年目の年収は低いが、2年目以降大幅に上がっていくという業種があります。外部からの批判をかわすためにそうするのですが、これは新卒の場合。転職は中途採用ですので、賃金上昇のカーブのどこかに配置されることになります。

他の人(年齢や経験が同じ)と比べて自分だけ著しく低いということはやはりどこかおかしいと考えるべきでしょう。

企業の中には、転職1年目は前職の年収を支払い、その1年間の働きから評価、査定し2年目の給与を決定するところもあります。この場合も、少なくとも転職1年目はそのままであり、やはりそれよりも下がる転職と言うことは避けるべきだと考えます。

以下のような基準で考えていただくと良いと思います。

  • 年収が上がる転職→これを目指す。具体的には1~2割増がベター。
  • 年収を維持する転職→少なくともこのラインはキープする。
  • 年収が下がる転職→「身を守る場合」を除き避けるべき。

収入が上がる場合、いきなり年収が倍と言う転職でも良いのではないかと考える方もいるかもしれません。前職で著しく不当な扱いを受けていた場合は例外かもしれませんが、そうではない場合、過度に年収が高い職場に転職すると、相応の働きを求められることになりますから、ハードルが高く評価が厳しくなってしまう(退職勧告予備軍になってしまう)可能性があると言うことです。

理想的なのは、1~2割の年収アップでモチベーションを維持しながら、より高いパフォーマンスを発揮して評価されると言うことになります。ご自身の年収×110%~120%を目標年収として設定しておくとよいでしょう。

労働環境について

年収が高ければ多少労働環境が厳しくても良いと考える人もいるかもしれません。しかし、長時間残業や休日出勤などを行い、結果として得られるキャリアについてはリスクを伴うと言わざるを得ません。

転職を行うと、新しい職場での職歴がスタートします。ここが重要で、何かあってまた転職を余儀なくされてしまった場合(自発的にポジティブなものではないということ)、転職先での職歴の短さがマイナスポイントになってしまいます。

「やはり耐えられなかったのか」と言う評価は、再転職するにあたっては避けたいもの。そのためには目に見える「地雷」に飛び込む必要はありません。「身を守る転職」以外のケースでも、あえて過酷だと分かっている環境に飛び込むのは避けたほうが賢明です。

事前の求人内容と実際は違ったと言うケースはざらですが、求人情報段階で明らかに厳しい条件のところに応募する必要は全くないです。一般的に労働環境が厳しい求人はハリーワークに集まりやすく、まず転職サイトなどを活用すると良いかもしれません。

目標としては
完全週休2日制
有給休暇20日(転職後すぐに付与されるのがベター)
1か月残業30時間以内

を目指しましょう。この条件はホワイトなのではなくむしろ「当たり前」だと考えて、転職活動をすることでモチベーションの維持につなげていきます。

雇用形態については、おそらくこの記事を読まれている方は正規雇用が前提だと思いますので、正社員が多く勤続年数が長いところを選択するとリスクが減ると思います。

以上、大きく2つの見地から転職先の条件を確認し、ご自身の「譲れない」ラインを明確にしておくことが大切です。

 
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市場の転職動向、求人時期を把握する

転職を思い立ってもすぐに開始すればよいのか、少し考えてみましょう。「身を守る」転職の場合はすぐに行動することが大切ですが、そうではない場合は転職時期に気をつけましょう。

採用時期として多いのは

  • 4月(年度当初)
  • 10月
  • 1月

になっています。それに合わせて求人をかけますので、優良な求人もこの時期に集中します。なぜならば、優良企業は五月雨式の退職が少なく、年中人手不足である可能性が少ないので、節目での採用で足りるからです。こうしたタイミングで中途採用を行っているところは人事労務管理もしっかりしています。

4月や10月採用は「年度」や「半期」と言うタイミングで辞める人が多いことになります。これは「耐えられずに辞める」と言うよりも「区切りをつけて辞める」人が多いということ。職場環境的にブラックではない可能性が高くなります。

また、1月求人の場合は12月に出るであろう冬のボーナスをもらって辞めるケースが多く、しっかりとボーナスが出る企業である可能性が高そうです。

4月、10月、1月採用を目指した求人:優良求人が多い
通年で採用している:ブラック求人が多い

と言う傾向があります。ただし、外資系企業などは優秀な人であれば時期を問わず採用しますので、一概には言えない面もあります。どういった企業なのか確認してみましょう。

ご自身の現在の職場でボーナスなどのタイミングもあります。在職していないと出ないのか、退職後も勤務時に遡り日割り計算されるのかを知ったうえで、転職活動の適切な時期を判断しましょう。

中途採用の場合は、採用日から遡り3か月前辺りから求人が出始めます。転職サイトなどに登録しておくと、適切な時期に求人案内が届きます。それに合わせて準備をしておくと良いです。

また、転職エージェントを介した転職場合は、決断したらすぐに行動に移っても良いと思います。エージェント経由の求人ならば、その人に転職価値ありと判断されれば、優良な「非公開案件」を紹介してもらうことが可能です。

この場合、ブラックな案件を紹介してすぐに辞められてしまうと、コンサルタントの評価や実績、収入にもマイナス査定になるので、迂闊な案件は紹介できないのです。

ハローワークの場合は常に求人がありますが、やはりブラックな案件もあり、よく注意していただくことが必要です。やはり、4月、10月、1月採用の求人が多いのですが、採用活動の期間は短く、直前に求人が出ることもあります。突発的な離職に対する対応はハローワークが一番迅速です。

以上、長々と述べましたがまとめると以下のようになります。

  1. 求人は4月、10月、1月採用のものが多い
  2. 優良求人はこの時期の採用を目的としたものが多い
  3. 通年で採用活動を行っている企業は「ブラック」の可能性がある
  4. 採用活動はおおよそ3か月前から(転職サイト)・ハローワークの場合はそれよりも短い
  5. 転職エージェントの案件ならば通年でも大丈夫

いずれにせよ、「退職願」は辞める1か月前に出しますので、それよりも前に内定まで決まります。直前に内定を出す場合は、既に離職している人が対象のものが多く、やはりお勧めできません。

しっかりと求人が多く、優良案件がある時期を把握したうえで、転職活動を行っていただくことが成功につながります。

転職活動期間を絞る

何月頃から転職活動を始めるのか、おぼろげながらも頭に浮かんできたのではないでしょうか?多くの企業の求人が増える時期に合わせて転職活動を行うのか、それともあえて閑散期を狙うのか。

優良求人が多いと言われているのは上述の通り、4月、10月、1月採用に合わせてものですが、その時期には他の転職希望者も活動をし、結果的に競争率が高くなってしまう可能性もあります。そこで、あえて閑散期を狙うと言う手もあります。それについては次項で述べたいと思いますが、肝心なのはどのくらい転職活動の期間を見積もるかと言うことです。

半年転職活動をしていれば、上記の求人が多い時期には必然的に重なります。それでは、長く続けていればそれで良いのでしょうか?そう簡単な話ではなさそうです。

転職活動は長くても半年を目途にしましょう

転職活動の方法として、現在の職場で働きながら行う場合と、職場を辞めて転職活動に専念する場合があると述べました。どちらにもメリットデメリットがあります。しかし、辞めてから活動する場合であっても、いつまでも行えばよいという気持ちでいると、転職活動は成功しないと言われています。

目標は3か月、長くても半年を目安にしたいところです。転職活動を「短期決戦」で考えたい理由は以下の通りになります。

①転職活動のモチベーションの維持

ご自身の最初の就職活動を思い出してください。就職氷河期、売り手市場、その年代によって条件は異なっていたと思いますが、半年以上続けた人は稀だと思います。最近までは大学3年生の2月~3月解禁で、6月~7月までには内定が出た人が多いのではないでしょうか。早い人ですとゴールデンウィークまでに決めているという人もいました。その時期は転職活動に全力投球であったと思います。

やはり、3~4か月の人が多く、転職活動の場合はその時よりも応募企業は少なくなるはずですから、短期で決めておきたいところです。そうしないと、モチベーションが維持できません。働きながら転職活動を行っている場合、だらだらと引き延ばしているとだんだん転職活動自体が億劫になってしまい「やっぱり、このままでいいや」となってしまいます。

意を決して転職活動を行うことに決めたのですから、それでは意味がありません。完遂するためにも短期集中でご自身のやる気を注ぎ込みましょう。

また、辞めてから転職活動を行っている人は、転職を決める以外にないわけですが、それでも長期間引き延ばすことは良くありません。段々「これでいいや」と当初決めたはずの条件が下がっていきます。本当は収入増、労働環境改善のために行っていた転職活動が、転職のための転職活動になってしまい、「どこでもいい」という最悪の選択をしてしまいます。

退路を断って行うのですから、半年内に必ず決める!と言う強い意志をもって転職活動をして、今後の人生設計へのモチベーションとしたいところです。

②企業側に評価が下がることを防ぐ

言うまでもなく、退職してから転職活動を行う場合、職歴の「空白期間」になってしまいます。長ければ長いほど「この期間何をやっていたのですか?」と聞かれる可能性が高くなります。「遊んでいました」と答えるわけもないのですが、その場合「転職活動をしていたのに決まらない人」=「他社での評価が低い人」と判断されかねません。

とは言え、いつかは決めなくてはいけない事ですから「転職活動を開始してすぐに御社に応募しました」とアピールできるほうがいいわけです。なお、面接時点で実際には退職して期間が経っていたにもかかわらず「辞めてすぐです」と答えても、転職後の健康保険や年金等の加入歴でばれてしまいます。

人物と能力を評価されて採用されたのですから、それで解雇されると言うことは現実的にはあまりないと言われていますが、虚偽報告をして入社したので法的には解雇事由になり得る(どこまで嘘をついたかにもよりますが)という見解もあります。

自分の心を偽ることは嫌でしょうから、早いうちに転職を決めておきたいところですね。

③採用のサイクルが3か月

転職サイトなどにある大手企業の求人の採用スケジュールは、おおよそ3か月になっています。つまり、半年で2サイクルです。

特に1月採用、4月採用の場合

10月応募→1月採用向け転職活動
1月応募→4月採用向け転職活動

と分けることができます。1月採用に向けて複数の企業に応募して全力で活動を行う、それで無理だったら4月採用に向けて1月から全力でがんばる、こうしたほうが効率良く無駄なくご自身の力を転職に注ぐことができます。

特に働きながら行う場合は、サイクルがはっきりしていたほうが準備しやすくスケジュールも立てやすくなります。やはり、ある程度期間を絞って活動することの意味がここに存在します。

転職エージェントに相談する

転職サイトやハローワークを活用した転職の場合は、上記のように半年を目安にすべきですが、転職エージェント経由のケースは必ずしもそうとは言えません。転職エージェントが抱える求人は、通常の転職サイトなどに出ない「非公開求人」も多く、いつ出るか分かりません。

その意図は、通常の採用活動の流れではなく、企業側が「これは!」と思う人材をピンポイントで一本釣りするためです。転職エージェントとの面談では希望する転職時期について伝えることになります。

・今すぐに
・3か月~半年
・1年くらい先
・もし良いものがあれば(絶対転職したいわけではない)

と選ぶことができ、もしご自身が転職価値のある人間だと判断されれば、「とっておき」の求人が出るまで待ってもらえることがあります。もちろん限度がありますが、転職市場において価値が高ければ、それだけ融通が利きます。

また、後で述べますが、転職エージェント経緯の場合事務処理(履歴書の作成、スケジュール調整など)は全て代行してくれますので、転職活動のし過ぎで疲れてモチベーションが下がるという事態が起こりにくくなっています。ですので、よく転職エージェント側と相談していただき、どうするのか決めましょう。

全体的に考えると、転職活動時期を絞って、そこに持てるリソースを全て注ぎ込むと言うスタイルのほうがうまくいきます。転職すると決めたのですから、ここは一気呵成に攻め込みましょう。

転職活動の開始時期を決定する

短期決戦で転職活動に臨むと言う判断を下した場合、いつから転職活動を開始すればよいのかと言うことになります。繰り返しますが、応募→採用までは長くて3か月です。それでは本命企業の3か月前に始めればよいのでしょうか?

ここで注意していただきたいのは、転職活動と新卒の就職活動では異なる面があると言うことです。新卒の場合、数か月前から就職サイトなどには求人が出ていて、「●月エントリー開始」と言うようにあらかじめ分かっています。大企業の場合は毎年定期採用を行っていますから、それをもとにご自身の応募スケジュールを立てやすいと言うことです。

つまり、いきなり本命に応募するのではなく「肩慣らし」「予行演習」と言う意味で他の企業を受けて、面接や筆記試験の練習をすることができます。そこで内定が出れば1つ~2つを10月までならキープできますので、精神的にも楽になり本命へ全力投球できます。

しかし、転職の場合は内定が出ればすぐに判断を求められることになります。数か月内定を「滑り止め」としてキープすることは難しいのです。それではいきなり本命企業を受ければよいのでしょうか?そうなると慣れがないためうまくいかない可能性があります。

新卒の就職活動と違い転職活動は

・求人がいつ出るのか、そもそも出るのかわからない
・場数をこなすための練習が難しい
・内定をキープできない

という厄介な問題があります。これらを同時に満たすことは難しく、どれかを犠牲にしないといけません。ではどれを犠牲にすべきなのか、出たとこ勝負でその時ある求人から「まし」なのを選べば良いのでしょうか?

必ずしもそうとも言えず、できるだけリスクヘッジしたいものです。従って、ここではこういう流れを推奨いたします。

転職エージェントに相談

ご自身の転職市場での価値を見定めてもらいます。ポイントは複数の転職エージェントに相談すること。担当コンサルタントと合う、合わないと言うことはどうしてもあり得ますので、客観的価値を知るためにこれをお勧めします。

転職市場価値=ご自身の能力ではありません。エージェントが推薦しやすい職歴と言うものがあり、そうではない場合は転職サイトなどをメインに活動します。

求人が多い時期から4か月前から活動する

内定をキープできないとは言っても、即断を求められることはありません。ある程度場数を踏んで、転職活動がどのようなものなのかを体験し、うまくいきそうかどうか判断できます。希望しない企業の選考が進み、一方で本命と言える企業の募集が始まれば、そちらに切り替えればOKです。内定をキープすることは難しいですが、選考の途中で辞退することは問題ありません。

こうやって、「選考が進む」→「もっと志望度の高い企業の選考が始まる」→「志望度が低い企業の内定が出そうなら辞退する」を繰り返すことで、1本の転職可能ラインを維持でき、実質「キープ」と同じような状態にできます。

失礼なことではないかと思うかもしれませんが、求人活動ではメール一本でお断りされるのですからお互い様です。むしろその企業が、みなさんの希望する条件を用意できなかったのだから仕方がない、くらいの認識でいて良いと思います。

自分の今後がかかっているのですから、ここは相手にへりくだることなく、当初設定した条件をよりクリアできる求人に採用されることを優先してください。

これが、4月、10月、12月から遡って4か月前、つまり前年の12月、6月、8月に入ってから活動すべきと言う根拠になります。

ともかく、転職エージェントに相談し、どういう形で転職活動を行うのがベターなのか判断する材料を得ましょう。