国民の2人に1人ががんにかかるとされています。がんにかかったとき、治療費はどれくらいかかるか不安を感じている人は多いでしょう。
そこで、データから治療費を探るとともに、治療費負担のしくみをみておきましょう。
がんの種類などによって治療費は異なる
がんでかかる治療費はケースバイケースです。がんの種類や進行具合、治療方法で異なるからです。
図表1は、平成25年度の1年間に、がんの治療でかかった費用です。がんの種類ごとに、入院と入院外(外来=通院)でかかった治療費総額を治療件数で割った、いわゆる平均額です。
図表1 がんの治療費
がんの種類 | 入院でかかった費用 | 入院外でかかった費用 | ||
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治療費総額 | 自己負担額 (3割) |
治療費総額 | 自己負担額 (3割) |
|
胃がん | 60万5,800 | 18万1,740 | 2万6,730 | 8,010 |
結腸がん | 59万9,310 | 17万9,790 | 4万1,880 | 1万2,560 |
直腸がん | 72万2,630 | 21万6,780 | 5万7,920 | 1万7,370 |
肺がん | 57万3,210 | 17万1,960 | 3万9,330 | 1万1,790 |
肝がん | 63万8,890 | 19万1,660 | 5万4,620 | 1万6,380 |
乳がん | 54万2,040 | 16万2,610 | 5,150 | 1万5,040 |
子宮がん | 59万4,420 | 17万8,320 | 2万4,160 | 7,240 |
悪性リンパ腫 | 90万9,590 | 27万2,870 | 5万4,250 | 1万6,270 |
白血病 | 144万1,360 | 43万2,400 | 8万620 | 2万4,180 |
その他 | 60万2,150 | 18万640 | 4万3,980 | 1万3,190 |
※厚生労働省「平成25年医療給付実態調査」より推計。10円未満切り捨て
※自己負担額(3割)は小学校入学後から70歳未満の人
入院でかかった費用を見ると、数十万円から150万円弱と高額です。通院は数千円から数万円です。この金額はあくまで平均なので、もっと高額なケースもあるでしょう。
ただし、この治療費用の全額を自己負担するわけではありません。公的医療保険が多くの部分を負担してくれるからです。
公的医療保険の自己負担のしくみは、年齢で異なる自己負担割合(小学校入学後から70歳未満は3割)を医療機関の窓口で負担します。
これは、入院も通院も同じです。この3割負担が高額になった月は、高額療養費制度が適用されて、自己負担は軽減されます。
高額療養費制度による自己負担限度額は、所得(月収)で5つに区分されていて、所得の多い人ほど自己負担になる治療費は増えます。
例えば、月収27万円以上51万5,000円未満の人が胃がんで23日間(1日に入院しその月のうちに退院)入院した場合の自己負担限度額を、表の治療費の金額で計算してみましょう。
・8万100円+(60万5,800円-26万7,000円)×1%=8万3,488円(自己負担限度額) ・18万1,740円(3割負担)-8万3,488円(自己負担限度額)=9万8,252円(高額療養費制度から還付される金額) |
つまり、治療費が高額になっても、負担は抑えられるということです。しかも、高額療養費制度は、同一世帯で直近12か月に3か月以上、該当すると「多数該当」として4か月目以降の自己負担限度額は軽減されます。
保険適用でも自己負担になる費用がある
がんにかかったときの治療費の自己負担は、高額療養費制度適用後の医療費に、入院時の食事代(1食あたり、原則260円)、差額ベッド代のかかる部屋を利用した場合の差額ベッド代、入院前後・入院中にかかる雑費などをプラスした金額になります。
例えば、先ほどの例で、入院時の食事代が60食だった場合(手術後などで食事なしのときを除いて)の食事代は、260円×60食=1万5,600円です。
1日1万円の差額ベッド代がかかる部屋に7日間いた後、一般病棟に移ったとすると、差額ベッド代が7万円。雑費が5万円かかった場合の自己負担額は下記のようになります。
・8万3,488円(自己負担限度額)+1万5,600円(入院時の食事代)+7万円(差額ベッド代)+5万円(雑費)=21万9,088円 |
この例は、入院と退院が同じ月のケースですが、入退院が月をまたいだり、治療費そのものが高額だったり、所得が高かったりすると自己負担額は高くなります。
また、先進医療を受けると、その技術料は全額が自己負担です。先進医療の技術の中で高額なのは、がんの放射線治療の一種の陽子線治療と重粒子線治療です。前者は約260万円、後者は約300万円かかります。
最近は、がんの治療は通院だけで行うケースも増えています。通院でも高額療養費制度の対象になりますが、治療が長引くと月々の負担は重くなります。
なお、公的医療保険が適用されない治療は自由診療となり、全額が自己負担になります。例えば、治療の途中に、認可されていない抗がん剤などを使うと、初診にさかのぼって費用の全額を自己負担する必要があります。