消費者金融からお金を借りた時の借入れや返済関連のトラブルについて相談、または苦情を言いたい場合どうすればいいのでしょうか?
トラブル時、貸金業紛争・解決センターという機関が消費者と貸金業者との間に入って、問題解決に向けて対応してくれます。
また、貸金業紛争・解決センターでは、浪費癖があり、新たな借金をしたくない人のための「貸付自粛制度」についても対応しています。
ここでは、貸金業紛争・解決センターが相談や苦情、トラブルにどのように対応するのか、貸付自粛制度とはどのような制度なのかを解説していきます。
貸金業相談・紛争解決のポイント
- 相談や苦情は貸金業相談・紛争解決センターで無料で対応してもらえる
- 貸金業相談・紛争解決センターなら裁判よりも低コストで問題を解決できる
- 貸付自粛制度を利用すると強制的に借金ができない状況を作れる
目次
貸金業相談・紛争解決センターとは

貸金業相談・紛争解決センターは、日本貸金業協会が設置している、借入れや返済など、金融に関する様々な苦情や相談を受け付けて対応する機関です。
消費者は無料で相談や苦情の対応をしてもらえます。
日本貸金業協会とは?
日本貸金業協会とは、多数の貸金業者(消費者金融)が加盟している機関です。加盟している貸金業者に対しては研修や監査を行うことで貸金業務が適正に行われるよう管理しています。
お金の借り入れに関する様々な相談や苦情を受け付けるなどのサービスを提供することで、消費者を多重債務や闇金などの不適正な業者から守ってくれています。
相談や苦情はどのように対応してもらえるのか
貸金業相談・紛争解決センターでは、消費者からの相談や苦情、トラブルについて、どのように対応し、処理するのでしょうか。
それぞれについての対応の流れについてみていきましょう。
相談への対応
貸金業相談・紛争解決センターに借金に関する相談をした場合、対応の流れや回答の内容などは下記のように決められています。
相談することができる人
相談することができるのは、個別の借入れに関する一般相談の場合は、債務者やその承継人、保証人と、その親族などです。
一方、経済的に困っている場合や返済が困難な状況で助言などを求める「債務相談」の場合は、債務負担者とその親族などです。
受け付けられた相談への対応の流れ
受付窓口で受理された消費者からの相談については、通常は相談に対応するための組織(相談受付課)に送られます。
相談受付課では、相談内容やその事実関係を確認し、必要があれば加盟している貸金業者から説明を受けたり、資料の提出や提示を求め、相談者に対して回答や助言を行います。
ただし、簡単な相談の場合は受付窓口で助言されて終わったり、他の団体を紹介することが適切であると判断された場合や、相談者が他の団体による解決を希望した場合は、受付窓口から他の団体を紹介されて終わります。
返済計画案には制限がある
返済が苦しい、借入しすぎて返済ができそうにないなどの債務相談をした場合は、返済計画案の作成を支援してもらえます。
その場合、返済計画案は返済期間が概ね3年を超えない範囲で、かつ毎月の返済金額の合計が、借り手の月収の3分の1を超えないと見込まれる範囲で行われなければならないと決められています。
苦情処理手続きについて
貸金業相談・紛争解決センターに貸金業者に対する苦情を申し立てた場合、対応の流れなどは下記のように決められています。
苦情を申し立てることができる人
苦情を申し立てることができるのは、日本貸金業協会に加盟している貸金業者に対して苦情や不満足なことがある債務者やその承継人などです。苦情処理手続きの申立人と苦情を受けた貸金業者は、法定代理人・弁護士・認定司法書士のいずれかの者を代理人とすることができます。
法定代理人とは?
法定代理人とは、未成年者の親権者・後見人など、本人の意思ではなく、法律の規定に基づいて代理人となる者のことです。
受け付けられた苦情への対応・処理の流れ
受付窓口で受理された苦情については、苦情について対応する組織(苦情受付課)に送られます。苦情受付課では、苦情を受けた貸金業者に対して苦情処理手続開始の通知をして、一定の事項を記載した回答書を30日以内に提出するよう求めます。
この回答書などをもとに事実関係を把握し、申立人と苦情を受けた貸金業者に対して説明や助言を行い、両者の意見を取り次ぎ、苦情解決の促進を図ります。
ただし、苦情の内容が簡易であり、高度な専門知識を必要としない場合、受付窓口で処理されます。この場合、受付窓口では申立人に対して必要な助言を行い、苦情を受けた貸金業者に対して、苦情の内容を通知し、15日以内に苦情処理完了の報告をすることを求めます。
紛争解決手続きについて
借り手と貸金業者との間で裁判になるようなトラブル(紛争)があった場合、紛争解決手続開始の申し立てをすると、貸金業相談・紛争解決センターが仲介役となり、紛争解決手続をします。
紛争解決手続とは
紛争解決手続とは、借り手と貸金業者との間の紛争について、貸金業相談・紛争解決センターが中立公正の立場で両者の交渉を仲介し、和解案を提示して和解による解決を図る制度です。
紛争解決手続を利用すると、裁判よりも短期間(6カ月以内)かつ安い費用でトラブルを解決することができるという点がメリットです。
紛争解決手続を申し立てることができる人
紛争解決手続開始を申し立てることができるのは、借り手または日本貸金業協会に加盟している貸金業者で、貸金業務関連の紛争の当事者である者です。
また、苦情処理手続きの当事者は、一定の期間内に移行申立書を提出すると、紛争解決手続への移行を申し立てることができます。
受け付けられた紛争への対応・処理の流れ
紛争の申し立てがなされた場合、紛争を受け付けた紛争窓口課から、相手方に対してその旨が通知されます。相手方が日本貸金業協会に加盟している貸金業者の場合、紛争解決手続に必ず応じなければなりません。
紛争解決手続が開始されると、紛争を解決するための組織(紛争解決委員)は、申立人と相手方の交渉を仲介し、必要があれば当事者や参考人から意見や報告、資料の提出を求めながら、専門知識や経験に基づいて両者に助言します。
貸金業相談・紛争解決センターでは、こうして交渉しながら、申し立てが受理されてから6カ月以内に紛争解決手続を完了するように努めます。
和解案や特別調停案の作成について
紛争解決委員は、紛争の解決に必要な和解案を作成して、当事者に対してその受諾を勧告することができます。両当事者が和解案を受諾すれば、そこで和解案の内容で和解が成立したものとされます。
一方和解案の内容では両当事者間で和解が成立しない場合は、特別調停案を作成して当事者に提示することができます。
特別調停案とは
特別調停案とは、貸金業者側が原則として応じる義務がある和解案のことです。
指定紛争解決機関制度とは
ここまで貸金業相談・紛争解決センターでの相談や苦情、紛争の扱いについてみてきましたが、貸金業者に対しても紛争解決に関する義務が定められています。
指定紛争解決機関とは
消費者と貸金業者とのトラブル解決の中立性や公正性を確保するため、トラブルを解決するための紛争解決機関は、金融庁によって指定・監督されています。
この金融庁に指定されている紛争解決機関を「指定紛争解決機関」といい、日本貸金業協会が指定されています。
貸金業者は必ず指定紛争解決機関と契約をしている
貸金業者は、必ず指定紛争解決機関である日本貸金業協会と契約をして、利用者から紛争解決の申し立てがあった場合は、日本貸金業協会を仲介役として公正な和解案で紛争を解決しなければなりません。
また貸金業者には、ウェブサイトなどに「紛争解決について日本貸金業協会と契約をしている」という旨や、日本貸金業協会の連絡窓口などを掲載する義務があります。
きちんと法律を守って運営している貸金業者は必ずウェブサイト上にこのような記載があるはずで、もしも記載がない貸金業者があれば、それは法律を守っていない悪徳業者ということになります。
貸付自粛制度について
日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センターでは、相談や苦情への対応の他に、「貸付自粛制度」の対応も行っています。
どうしても浪費癖がなおらず、気づいたらカードローンを利用してしまうというような人は、貸付自粛制度を利用して強制的に借金ができない状況をつくることができます。
貸付自粛制度とは
貸付自粛制度とは、消費者本人や親族(※1)が、本人に浪費癖があることなどを理由に日本貸金業協会に貸付自粛を申告することで、協会が「この人は貸付自粛制度を利用している人である」という情報を信用情報機関に登録する制度です。
※1 親族が申告できるのは、本人が所在不明の場合のみです。
信用情報機関とは?
信用情報機関とは、クレジットカードやローン契約のように、現金を使わずに個人の信用に基づいて行われる信用取引の履歴情報である信用情報を金融機関から集めて、それを管理し、提供する機関です。
信用情報機関に加盟する金融機関は、自社で契約する際に取得した契約者の信用情報を、信用情報機関に登録します。
信用情報機関は登録された情報を管理し、管理された情報は、加盟している各金融機関が新たに消費者と契約を結ぶ際に、金融機関に提供されます。
貸付自粛情報はどれくらいの期間登録されるのか
日本貸金業協会によって登録された貸付自粛情報は、申告の撤回や取り消しがなければ、5年間は信用情報機関に登録され続けます。その間登録された消費者本人は、カードローン契約など、借入れ契約ができなくなります。
新たな借金ができなくなるため、無理な借入れを防ぎ、多重債務に陥ってしまうリスクを下げることができます。貸付自粛情報は、3か月間は削除することができません。
まとめ
日本貸金業協会が設置している貸金業相談・紛争解決センターは、消費者から借入れや返済などに関する相談や苦情を受け付け、貸金業者との間に入って問題解決の助けになってくれます。
また、貸金業者との間でトラブルが発生してしまった際も、貸金業相談・紛争解決センターを利用することで、直接弁護士などに相談したり、裁判をするよりも安い費用で問題を解決できます。貸金に関する相談や苦情、貸金業者とのトラブルがある場合は、まずは貸金業相談・紛争解決センターに連絡してみましょう。
他にも、貸付自粛制度についても対応しています。浪費癖があり新たな借金をしたくない人は、多重債務を回避する手段として、この制度を利用して借金ができない状況をつくって無理な借入れを防ぐことも考えてみてはいかがでしょうか。