お金を借りる事に気をとられていて、「大切な書類を受け取ってなかった」など後で気付くことも。書類についてわかっていれば事前に避けられるトラブルもあります。
このページは契約前から完済後までお金を借りる上で当然あるべき書類や内容についてご紹介します。
ここで紹介する内容は貸金業法で決められていることなので、守ってない業者との取引はしないように気を付けましょう。
書類と特定公正証書のポイント
- カードローンの契約をする際は、契約前・契約時に必ず書面を受け取る必要がある
- 完済した際はトラブルを避けるために契約書や借用書の原本を返還してもらう必要がある
- 特定公正証書を作成する場合は、貸金業者から書面の交付と説明を受ける必要がある
契約前の書面について

お金を借りる際に、借り手は契約を結ぶ前にどのような契約を結ぶのか、契約内容を十分に理解しておく必要があります。
貸金業法では、借り手が契約前に十分に契約内容を理解できるよう、貸金業者に対して書面の交付を義務付けています。
契約前書面は必ず受け取る必要がある
貸金業者は、貸付契約を締結する前に契約の内容を説明する書面を借り手に対して交付する義務があります。
すでに契約内容は十分に理解しているから内容を説明する書面は要らないという方もいると思います。しかし、法律で書類の授受や内容が定められているため、必ず受け取る必要があります。
契約前書面の内容
契約前に交付される書面は、借り手が十分に契約内容を理解できるよう、以下の事項を8ポイント以上の大きさの文字で記載するよう法律で定められています。
- 貸金業者の商号・名称・氏名、住所、登録番号(※1)
- 貸付金額
- 貸付利率
- 利息の計算方法
- 借り手が負担する元本と利息以外の金銭
- 賠償額(※2)を定める場合はその内容
- 返済方式(※3)
- 返済期間および返済回数
- 返済方法および返済を受ける場所(※4)
- 各回の返済期日の設定の方式および返済金額の設定の方式(※5)
- 期日前の返済の可否とその内容
- 期限の利益の喪失(※6)の定めがある場合はその内容
- 借り手の返済能力に関する情報を信用情報機関(※7)に登録する場合は、その旨及びその内容
- 将来支払う返済金額の合計額
- 手続実施基本契約の相手方である指定紛争解決機関の商号・名称
登録番号
貸金業者が営業をする際に財務局または都道府県知事から交付される番号のことです。登録番号がなければ貸金業者は営業できず、この番号を持たずに営業している業者はいわゆる闇金ということになります。
賠償額
万が一借り手が約束の期日までにお金を返せなかった場合に貸金業者に対して支払わなければならない金銭のことです。
返済方式
返済方式には、主に元金均等返済方式、元利均等返済方式、リボルビング方式があります。
返済を受ける場所
返済を受ける場所とは、例えば店頭窓口や銀行ATMなどです。
各回の返済期日の設定の方式および返済金額の設定の方式
各回の返済期日や返済金額をどのように決めるかということです。例えば返済期日であれば「毎月1回、月末」、返済金額であれば「返済金額の合計は○円で、△回払いなので1回あたりの返済金額は×円」というような内容になります。
期限の利益
期限の利益とは、借りたお金を期限までに一括で返済せずに、分割で返済してもいいという権利、つまり分割払いができる権利のことです。
期限の利益の喪失とは、支払いが遅れたなどの理由により、この権利がなくなり、残債を一括で全額支払う義務が生じることをいいます。
信用情報機関
信用情報機関とは、信用取引に関する履歴情報である信用情報を金融機関から集めて、それを管理し、金融機関に提供する機関です。
カードローンの場合の書面表示項目
カードローンなど、契約の際に利用可能金額を定め、その範囲内で個々の借入れを受けるような契約(極度方式基本契約)の場合は、契約の際に具体的な借入れを受けるわけではないため、上記の表示項目とは異なります。
カードローンの場合は、貸付金額・返済期間および返済回数・将来支払う返済金額の合計額は記載事項ではありません。
その代わりに、「限度額(極度額)」と、「『限度額を1回貸付ける場合』など仮定をおき、その仮定に基づいた将来支払う返済金額の合計額、返済期間および返済回数およびその仮定」を記載する必要があります。
なお、最初に契約した後、個々の借入れの際には事前に書面を受け取る必要はありません。
契約前書面の受け取り方法
- 郵送
- 手渡し
- 電磁的方法(Web、メール添付など)
契約前に交付される書面は、郵送で受け取る方法の他、手渡しや電磁的方法によって受け取ることができます。
電磁的方法とは、メールで送信したりウェブサイト上でダウンロードしたりと、紙の書面ではなく電子的に処理する方法のことで、借り手が承諾した場合にのみこの手段をとることができます。
自宅に書類を郵送してほしくない人は、業者や申し込み方法によっては店頭窓口で書面を受け取るか、電磁的方法を利用することができます。
契約時の書面について
お金を借りた際に、どのような契約が結ばれたのか、その契約の内容を明確に書面に残しておく必要があります。消費者金融が利用者に対して契約時に契約内容を明らかにする書面、つまり契約書を交付することは貸金業法で定められています。
契約書は必ず受け取る必要がある
消費者金融は、貸付契約を締結する際に、借り手に対して契約書を交付する義務があります。契約前に交付される書面と同様、法律の定めに従い必ず受け取らなくてはなりません。
また、契約前に渡した書類とほぼ同じなので契約書を渡されないという状況になったら、その消費者金融から借りるのは辞めた方がいいでしょう。
契約時書面の内容
契約書は、契約締結前に交付する書面の記載事項に以下の事項を加えて、契約前同様8ポイント以上の大きさの文字で記載するよう法律で定められています。
- 借り手の商号・名称・氏名、住所
- 契約年月日
- 貸付けの際に貸金業者が受け取る書面の内容(※1)
- 物的担保を定める場合は担保の内容
- 保証契約を締結する場合は保証人の商号・名称・氏名、住所
- 借り換え契約の場合は、その債務残高の元本・利息・賠償額の内訳および借り換え前の貸付契約を特定する事項
※1 例えば、運転免許証のコピー等の本人確認書類など、契約の際に借り手から貸金業者に提出する書面のことです。
カードローンの場合の契約書
契約前に交付する書面と同様、カードローンの場合は最初に契約する際の契約書に記載しなければならない事項が異なります。契約前に交付される書面の記載事項に以下の事項を加えます。
- 借り手の商号・名称・氏名、住所
- 契約年月日
- 貸付けの際に貸金業者が受け取る書面の内容
- 物的担保を定める場合は担保の内容
- 保証契約を締結する場合は保証人の商号・名称・氏名、住所
- 返済期間・返済回数・返済期日または返済額を変更しうる場合はその旨
- 契約前に交付される書面と同様、貸付金額は記載事項ではなく、返済期間および返済回数、将来支払う返済金額の合計額については、仮定に基づくものを記載します。また、契約時に交付される書面の場合、契約前の書面と異なり、個々の借入れの際にも書面の交付が必要となります。ただし、個々の借入れは最初の契約内容に基づくものなので、以下の事項については省略または代替が可能です。
- 貸金業者の登録番号は省略可能
- 借り手の商号・名称・氏名、住所は契約番号などで代替可能
- 貸付けの際に貸金業者が受け取る書面の内容は省略可能
- 利息の計算方法、期日前返済、期限の利益喪失の定めについては、最初の契約書に記載されている場合または最初の契約書よりも借り手に有利な場合は省略可能
- 返済方法および返済場所、物的担保、保証契約、借り換えの場合についての定めは最初の契約書に記載されている場合は省略可能
- 信用情報機関の登録についての定めは省略可能
最近の消費者金融はwebで契約手続きを完了できるところがほとんどです。電磁的方法で書類のやり取りを行えるのは忙しくて自動契約機や銀行に行けない人に適しています。
契約変更の際にも書面の受け取りが必要
契約時の書面に記載された内容のうち、貸付利率を引き上げたなどの重要な変更が生じた場合は、変更の際にも書面を受け取る必要があります。
ただし、貸付利率を引き下げるなど、借り手に有利な変更の場合は書面を受け取る必要はありません。
契約時の受け取り方法
契約時の書面の受け取り方法は、契約前に交付される書面と同様、郵送で受け取る方法の他、手渡しや電磁的方法によって受け取ることができます。ただし、電磁的方法をとる場合は事前に借り手が同意している必要があります。
返済時の領収書について
借り手と消費者金融との間のトラブルを防ぐため、貸金業法では、「貸金業者は、貸付契約に基づく債権の全部または一部の返済を受けた場合は領収書を原則として発行しなければならない」と定めています。
領収書は必ず発行されるわけではない
借り手が借り入れた債務の一部でも返済した場合は、貸金業者はその都度直ちに借り手に対して領収書を交付しなければなりません。この領収書を「受取証書」といいます。
領収書は原則として借り手からの請求がなくても必ず交付する必要がありますが、返済方法がATM振り込みなど振込明細や通帳の記載に残る場合は、借り手からの請求があった場合のみ交付すればよいとされています。
また、事前に借り手の同意があれば、電磁的方法で交付することもできます。
領収書の内容
領収書には、以下の事項を8ポイント以上の大きさの文字で記載する必要があります。
- 貸金業者の商号・名称・氏名、住所、登録番号
- 契約年月日
- 貸付金額
- 受領金額およびその利息、賠償額、元本への充当額
- 受領年月日
- 返済を受けた旨
- 借り手の氏名
- 借り手以外の者が返済した場合はその者の氏名
- 返済後の残存債務の額
完済時の書類
お金を借りる際には必ず契約書を作成しますが、完済した後に契約書を消費者金融が持ったままだと、「まだお金を返していない」と言われてしまった場合に完済した証拠がないため、トラブルになる可能性があります。
そこで、貸金業法では、貸金業者は借り手が完済した際に債権証書(契約書や借用書)を借り手に返還しなければならないと定めています。
契約書だけで、債券証書の返還が無い場合
債権証書は借り手からの請求がなくても必ず返還しなければならないとされています。
もし完済しても契約書の原本を返してもらえない場合は、トラブルを避けるため、必ず返還してもらえるよう貸金業者に請求しましょう。
特定公正証書について
借り手にとって不利な存在である「特定公正証書」を借り手の同意がないまま作成されることを防ぐため、貸金業法では、特定公正証書の作成に関する制限を定めています。
特定公正証書とは
特定公正証書とは、借り手が借りたお金を返せなかった場合に、直ちに強制執行(※1)に服する旨が記載された契約書のことです。
通常、借り手がお金を返せなかった場合に強制執行という手段をとるためには裁判をする必要があるため、時間がかかります。
しかし、特定公正証書があれば裁判を行わなくても強制執行を行うことができます。とても強い力のある書類です。
強制執行とは
強制執行とは、借り手から約束通りの返済がない場合に、強制的に借り手の財産を差し押さえて支払いをさせる制度です。
特定公正証書についての制限
借り手にとって不利な存在である特定公正証書ですが、法律が整備される前までは、一部の悪質な貸金業者では、借り手が知らないうちに特定公正証書が作成してしまうことがありました。
その手口は、借り手にきちんと説明をせずに、自社の社員などの関係者を借り手の代理人として委任状を取り、特定公正証書が作成していたのです。
このような事態を防いで借り手を保護するため、貸金業法では以下のことが禁止されています。
- 消費者金融など貸金業を営む者は、借り手から特定公正証書の作成を公証人(※1)に依頼するための委任状を取得してはならない
- 貸金業を営む者は、借り手が特定公正証書の作成を公証人に依頼することを代理人に委任する場合には、代理人の選任に関して推薦などの関与をしてはならない
公証人とは
公証人とは、当事者や関係者から依頼を受けて、契約や遺言などの公正証書を作成する権限を持っている公務員のことです。
書面交付による説明が義務付けられている
上記の禁止事項に加え、特定公正証書を作成する場合には、あらかじめ借り手に対して書面を交付し、もし借り手がお金を返せなかった場合、特定公正証書があれば、貸金業者は裁判をしなくても直ちに借り手の財産に対する強制執行ができる旨を説明することを義務付けられています。
まとめ
カードローンの契約をする際は、契約内容を十分に理解するため、契約前と契約時に必ず契約内容が記載された書面を受け取る必要があります。
もし書類の内容で理解できない内容や疑問があれば、必ず貸金業者に確認しましょう。完済した際は、トラブルを避けるため、契約書や借用書などの債権証書を必ず返還してもらいましょう。
特定公正証書を作成する場合は、必ず消費者金融から書面の交付と説明を受ける必要があります。
これらの書面に関する事項を理解しておき、カードローン契約をする際には、借り手に不利な契約をさせられたり、トラブルのもとになるような契約をしないようにしましょう。
また、契約前に書面の内容が上記に書かれていることと違うと気付いた場合は、悪質業者の可能性があるため、契約しないようにしましょう。