銀行教育ローン、国の教育ローン、奨学金…3つの違い
子供の教育費、併願している場合など合格してから準備資金の不足に気付く方も少なくありません。不足分をどう補うか、支払期限に追われながら選択するよりも前々から準備しておくとより良い選択ができます。
とはいっても教育ローンや奨学金がたくさんあってよくわからない…そんな方のために下記3つの違いをまとめてみましたので参考にしてみてください。
- 銀行の教育ローン
- 国の教育ローン
- 奨学金
銀行と国の教育ローン、奨学金の比較一覧
種類 | 銀行教育ローン | 国の教育ローン | 奨学金 |
---|---|---|---|
運用者 | 各金融機関 | 日本政策金融公庫 | 日本学生支援機構 |
借主 | 保護者 | 保護者 | 学生 |
借入方式 | 一括・カード型 | 一括 | 毎月払い |
金利 | 低金利 | 銀行より低金利 | 無利子・超低金利 |
借り入れに関する年収の上限 | 問わない | 問われる | 問われる |
借り入れに関する成績の条件 | 問わない | 問わない | 問われる |
申し込みのタイミング | いつでも | いつでも | 年に数回 |
融資を受けるタイミング | 最短数週間後 | 最短20日前後 | 入学月~数ヶ月後 |
返済開始のタイミング | 借入後すぐ | 借入後すぐ | 学生が卒業後から |
難易度が高いのは?
最も利用難易度が高いのは「奨学金」です。年収や成績についても問われ、申し込みについても自由度が低いです。金利がほとんど無いというメリットはありますが利用できる現実味としては最も低い水準となるでしょう。
使い勝手が良いのは?
教育ローンに関しては、金利が低めの「国の教育ローン」のほうがメリットは大きいですが、奨学金と比較すれば「銀行教育ローン」と大差ないと言えます。
むしろ、融資までのタイミングや金融機関によってはカード型の教育ローンを提供しているなど、金融商品としての選択の幅が広い銀行教育ローンのほうが使い勝手は良いかもしれません。
コレには注意!
ですが、銀行教育ローンを利用する場合は、一般的なカードローンほどではないにしても「借りすぎ」には注意が必要です。
金利は最大で年間5%ほどになります。仮に金利5%の条件で300万円借りているとすれば、初回の返済時には12,500円もの利息を支払わなければならなくなります。
金利がほとんど発生しない奨学金と組み合わせることができれば、この負担を最小限にできるためおすすめです。
それぞれの違いを解説していきます。
銀行の教育ローン
「教育ローン」とは、子供の教育に関わる費用を調達するために利用することができる金融商品の一つです。いわゆる「目的ローン」の一種であり、目的が限定されていない一般的なカードローンやキャッシングと比較して金利が低いという点が特徴です。
一般的なカードローンとの比較
そこで、「住信SBIネット銀行」が提供している「MR.教育ローン」と「MR.カードローン」について比較します。
MR.教育ローンとMR.カードローンの比較
種類 | MR.教育ローン | MR.カードローン |
---|---|---|
金利(年利) | 1.775%~3.975% | 0.99%~14.79% |
利用限度額 | 10万円~1000万円 | 1200万円 |
借入期間 | 1年~15年 | - |
金利の変動 | 毎月見直し | 変動金利 |
資金使途 | 教育関連資金 他の教育ローンの借り換え | 一部除き指定なし |
大きな違いとしては、以下の2つが挙げられます。
- 金利
- 資金使途
金利
まずは「金利」です。銀行カードローンの金利は、消費者金融の金利よりも低い水準となっています。上記の表で見ると最低金利こそ低い水準となりますが、問題なのは最高金利が15%ほどの水準になっていることです。
カードローンの金利は、基本的に最高金利がいかに低いかという点が重要です。金利が優遇されるにふさわしい理由があれば別ですが、基本的に高い水準の金利でお金を借りることになってしまいます。
一方、目的ローンの一種である教育ローンの方は、上記の表では約4%という水準です。一般的な銀行の教育ローンの金利は2%~5%程度であり、最高金利は一般的な銀行カードローンの半分~3分の1程度まで抑えられています。
教育ローンはそれなりにまとまった金額を借り入れることになるので、数%~10%の金利の違いが最終的な支払利息総額を大きく変えることになります。
資金使途
もう一つは「資金使途」です。教育ローンは目的ローンの一種であり、その資金の使用目的は「教育資金」に限定されます。
もちろん、借り入れたお金を実際に何に使うのかまでは追求されることはほとんどありませんが、審査申し込みに際してはその資金目的を証明できる書類が必要になります。
教育ローンの場合であれば、お子さんの学生証や合格通知、場合によっては対象となるパンフレットや領収証を提出しなければなりません。
金融機関ごとに特徴が異なる
また、銀行教育ローンの特徴の一つとして「提供する金融機関ごとに特徴が異なる」という点も挙げられます。金融機関の教育ローンは、いわゆる「金融商品」です。商品である以上、他行との差別化は必要になるということです。
例えば「カード型」の教育ローンです。これは一般的なカードキャッシングと同様に、追加での融資を簡単に受けられる仕組みです。急な教育資金の必要性に対しても対応できます。他にも、後述する奨学金の特徴である「在学中の元金据え置き」など、金融機関ごとにさまざまな特徴があります。
銀行教育ローンの融資スピードや、使途用途の範囲、タイプについては下記のページをご覧ください。
推薦合格やAO合格でも安心!いつでも借りられる銀行の教育ローン
国の教育ローン(教育一般貸付)
次に解説するのは、一般に「国の教育ローン」と呼ばれるものです。これは、「日本政策金融公庫」が取り扱っている「教育一般貸付」が代表的なものであり、要するに国が取り扱う教育ローンということになります。
銀行の教育ローンとの比較
では、先程の「住信SBIネット銀行の教育ローン『MR.教育ローン』」と、国の教育ローンを比較してみたいと思います。
銀行と国の教育ローンの比較
種別 | MR.教育ローン | 国の教育ローン |
---|---|---|
金利(年利) | 1.775%~3.975% | 1.81% |
利用限度額 | 10万円~1000万円 | 350万円 |
借入期間 | 1年~15年 | 15年 |
金利の変動 | 毎月見直し | 固定金利 |
資金使途 | 教育関連資金 他の教育ローンの借り換え |
教育関連資金 |
収入の上限 | 問われない | 問われる |
成績の条件 | 問われない | 問われない |
国の教育ローンのメリット
上記の表を踏まえて、国の教育ローンを利用することが銀行教育ローンよりも優れている部分について解説します。
金利が低い
国の教育ローンの最大のメリットは「金利が低い」ということです。MR.教育ローンの場合、上記の例で言えば最大で約4%、一般的な銀行教育ローンの金利の上限はおよそ5%です。
一方で国の教育ローンの場合、現行では1.81%の固定金利で提供されています。これは銀行教育ローンの金利の下限とほぼ同じ水準です。
要するによほど好条件で借り入れできない限り銀行教育ローンよりも国の教育ローンは低金利で借り入れができるということになります。
国の教育ローンのデメリット
次に、国の教育ローンが銀行教育ローンよりも見劣りする部分について解説します。
借り入れ上限額が低い
まずは「借り入れの上限額が低い」ということです。MR.教育ローンと比較すると、1000万円と350万円ですから、約3分の1の金額になります。
借金である以上、多額の資金を借り入れは利息の負担が大きくなります。いくら国の教育ローンが低金利であるとは言え、多くのお金を借り入れしないことにこしたことはありません。
しかし、必要なお金を調達できてこその教育ローンであり、数年間通うことになり、相応のお金を必要とするのに上限350万円では不足することも少なくありません。
国の教育ローンは、350万円を上限とすれば何度でも借り入れを可能としています(350万円借りても50万円返済すれば、50万円を限度として追加借り入れができる)。しかし、一般的なカードローンとは異なり、追加で借り入れする度に審査を必要とします。
収入の上限が設定されている
次に、「収入の上限が設定されている」ということです。国の教育ローンを利用する際には、その子供の保護者の世帯年収が一定額以内であることが必要となっています。条件となる年収はその世帯の子供の人数によって決まります。
子供の人数 | 世帯年収の上限額(給与所得者) | 世帯年収の上限額(事業所得者) |
---|---|---|
1人 | 790万円※ | 590万円※ |
2人 | 890万円※ | 680万円※ |
3人 | 990万円 | 770万円 |
4人 | 1,090万円 | 870万円 |
5人 | 1,190万円 | 970万円 |
※子供の人数が1人または2人の場合、以下の条件のうち1つでも該当する項目があれば、上限額が990万円(所得770万円)まで緩和されます。
国の教育ローン:収入上限の緩和条件
- 勤続(営業)年数が3年未満
- 居住年数が1年未満
- 世帯のいずれかの人が自宅外通学及びその予定している
- 借入申込人またはその配偶者が単身赴任者
- 海外留学資金目的で国の教育ローンを利用する場合
- 借入申込人の年収(所得)に占める借入金返済の負担率(今後1年間の借入返済額÷年収)が30%超の場合
- 親族に「要介護(要支援)認定」を受けている人がいて、その介護に関する費用を負担している
- 大規模な災害によって被災された人
国の教育ローンの概要や、対象となる学校、申込み方法について詳しくは、下記のページで確認できます。
子ども1人350万円まで借りられる「国の教育ローン」を検討しよう
奨学金
奨学金とは、就学にあたって経済的な困難がある学生に対して、それを支援するための制度の一つです。利用するにあたっては、一定以上の成績であることなどを要件とします。
奨学金の2つのタイプ
奨学金には、大きく分けて「貸与型」と「給付型」という2つのタイプが存在します。
- 貸与型 ⇒ 返済が必要
- 給付型 ⇒ 返済が不要、狭き門
貸与型
貸与型の奨学金は、教育ローンと同じように支給されたお金を返済しなければならないタイプの奨学金です。日本で特に利用者の多い「日本学生支援機構」の主な奨学金制度もこれに該当します。
貸与型の奨学金はさらに細かく分類すると「無利子型」と「有利子型」の2種類があります。これらは文字通り、返済するにあたって利息が発生するかどうかの違いです。
当然ながら無利子型のほうが有利な条件で返済が可能なのですが、その分だけ利用条件が厳しく指定されています。日本学生支援機構の奨学金制度では、第一種奨学金が無利子型、第二種奨学金が有利子型に分類されています。
給付型
給付型の奨学金は、文字通り「給付される奨学金」です。返済義務が発生する貸与型と違い、給付型の奨学金は返済義務が生じません。学費などの就学に必要なお金を支給してもらい、将来的な返済リスクを抱える必要がありません。
しかし、無利息型の貸与型奨学金と比較しても非常に狭い門となります。そのため、多くの場合は貸与型の奨学金を利用するか、教育ローンなどその他の方法を選択するケースが多いです。そのため、以降の奨学金は貸与型の奨学金を前提に話を進めていきます。
奨学金と教育ローンの違いは?
次に、奨学金(貸与型)と教育ローンにどのような違いがあるのか解説します。ここで比較するのは数値ではなく、根本的な違いがメインとなります。
返済する人の違い
まずは「返済する人」の違いです。貸与型奨学金も教育ローンも、有り体に言えばどちらも「借金」です。借金である以上は返済義務が生じるわけですが、奨学金と教育ローンでは返済義務が生じる人、つまり「借り主・返済主」が異なります。
貸与型奨学金の返済義務は、その奨学金を使った「学生本人」が負うことになります。一方で教育ローンの場合は、それを申し込んだ保護者が返済義務を負うことになります。もちろん、実際にはもう一方が代わりに返済を行うということも可能ですが(教育ローンを、学生がアルバイトして返済する等)、基本的な返済義務者はそれぞれ異なります。
利用できる時期の違い
次に「利用できる時期」の違いが挙げられます。この違いにより、奨学金よりも教育ローンを利用しなければならないというケースが増えることになります。
奨学金と教育ローンの利用可能時期
種別 | 利用できる時期 |
---|---|
奨学金 | 最大年3回 |
教育ローン | いつでも |
奨学金は、年間で最大3回しか利用のチャンスがありません。
奨学金は、高校3年生の時に申請する「予約採用」と大学入学後に申請する「在学採用」の2種類があり、予約採用の場合は高校3年生の5~6月に1回、第二種奨学金の場合は10~11月ごろに2回めの募集時期があります。
在学採用の場合は入学直後4月に説明会が行われ、募集が開始されます。原則として、これ以外の時期には奨学金の申請はできず、機会を逃せば奨学金を利用できません。
一方で教育ローンの場合は、基本的に年中いつでも申し込みを受付しています。また、審査申し込みから順調に行けば、最長でも1ヶ月で融資を受けられます。そのため、入学資金を調達したい、後期の授業料を追加で調達したいなど、さまざまな希望に応じて教育ローンを利用できます。
利用制限の違い
次に「利用制限の違い」についてです。奨学金と教育ローンは基本的に借金の性質を持っているという点で共通していますが、根本的な存在意義が異なるので、利用する際に満たすべき条件が異なります。
奨学金制度を利用したい場合、貸与型であっても「学力」と「保護者の収入」に一定の基準が設けられています。学力は一定以上、収入は一定以下であることが求められます。一方で教育ローンの場合は学力をその要件とせず、銀行教育ローンの場合であれば年収もその要件となりません。
返済開始時期の違い
次に「返済義務開始時期の違い」です。基本的には借金である奨学金と教育ローン、いつかは返済を開始しなければなりませんが、その開始のタイミングは両者で大きく異なるのです。
奨学金と教育ローンの返済開始時期
種別 | 返済開始時期 |
---|---|
奨学金 | 対象となる学生が卒業してから |
教育ローン | 借りた翌月から |
奨学金の場合、返済の開始は「学生が卒業してから」です。借主が学生となるため、卒業して就職し、自分で収入を得られるようになるまで返済を待ってもらうことができます。在学中にアルバイトをしていなくても、返済の資力に困る心配はありません。
一方で教育ローンの場合は、基本的に「借りた翌月から」返済開始となります。これは、契約時の取り決め次第で、借り入れの2~3ヶ月後からの返済開始ということもありますが、年単位で返済を待ってもらえるということはありません。
簡単に言えば、教育資金の借り入れからすぐに返済が必要になるということです。ただし、教育ローンの中には、在学中は元金の返済は無しで、利息のみ支払うと言う形をとっているところもあります。
返済時の利息の発生の仕方の違い
また、同様に「返済時の利息の発生の仕方」にも違いがあります。借金である以上、借り入れから返済までの期間に応じて、年利という形で利息が発生します。しかし、奨学金と教育ローンでは、利息が発生開始するタイミングが大きく異なります。
奨学金の場合、在学中に利息は発生しません。つまり、在学中4年間に利息が積もりに積もって、ということは起こらないということです。一方で教育ローンの場合、基本的に借り入れの翌日から利息が発生します。
借り方の違い
最後に「借り方の違い」が挙げられます。どちらも、所定の金額を用意してもらえるという点は同じですが、どういったタイミングでどれだけ受け取るのかということは大きく異なります。
奨学金と教育ローンの借り方
種別 | 利用できる時期 |
---|---|
奨学金 | 毎月、所定の金額を受け取る |
教育ローン | 一括 or 希望のタイミングで必要額など様々 |
奨学金の場合、基本的に「毎月、所定の金額を受け取る」と言う形になります。そのため、特定のタイミングで多額の資金が必要になるとしても、それに対応することができません。
一方で教育ローンの場合は利用する金融商品ごとに特徴が異なります。一括で借り入れする場合もあれば、希望するタイミングに必要額を借り入れできるタイプの場合もあります。特に銀行教育ローンは金融機関ごとに特色が異なるため、自分にとって最適な条件を選びやすくなります。
教育ローンと奨学金を組み合わせる
次に、「教育ローン」と「奨学金」を組み合わせて利用することについて解説します。
教育ローンを利用すると金利が高い
まず、教育ローンのデメリットとして「金利が高い」ということが挙げられます。
これは一般的なカードローンや消費者金融のキャッシングと比較すれば低いことには違いありませんが、無利子あるいは超低金利で融資を受けられる奨学金と比較するとその差は明確になります。
借入額が相応の水準になる教育ローンの場合、数%の金利であっても返済期間が長引くことで無視できない負担となります。金利において、より良い条件となる奨学金と比較すると、その点がどうしてもネックになります。
奨学金が多いと子供が苦労する
とは言え、奨学金にもデメリットはあります。それは「子供の将来の負担」です。奨学金制度はその借主つまり返済義務を負う人が学生本人となります。
返済開始時期は子供が卒業して後、自分で収入を得られるようになってからですが、「果たして本当に返済は大丈夫なのか?」と言われれば、その限りではありません。
昨今、奨学金返済の負担が問題となっています。無利息あるいは超低金利での返済とはなりますが、相応に長く、1回の支払いも決して少ないとは言い難い返済を若くして負担することになります。
昨今の新卒採用から短期間での離職率の高さとも相まって大きな問題に発展しつつあります。
金利が低い奨学金と親が返済する教育ローンを組み合わせて双方の負担を軽減して返済
そこでお勧めの方法として、奨学金と教育ローンを組み合わせて利用するという方法があります。奨学金と教育ローンは一方しか利用出来ないというわけではなく、奨学金を利用した後に教育ローンでお金を借りる、ということも可能です。
その最大のメリットは「親・子の双方の負担が最小限で済む」ということです。
単純に考えれば、1人が100を負担するよりも、2人が50ずつ負担するほうが楽であり、より現実的であるということです。金利が高めの教育ローンだけでも、将来の負担が不安になる奨学金だけでもない、その両方を運用することによってそれぞれのリスクを最小限に抑えることが可能です。
また、奨学金の利用ではお金が間に合わない場面における、教育ローンとの併用も有効です。奨学金はその制度の特性上、お金を受け取れるまでに時間がかかり、必要なタイミングに間に合わないということもデメリットとして挙げられます。
そこで、融資までのタイミングが早い教育ローンでそのお金を賄って、あとは奨学金で賄っていくという方法です。これならば、教育ローンの利用額は最小限であり、繰り延べ返済もしやすくなります。そうすれば、教育ローンで支払う利息を少なくすることができます。
奨学金についての詳細(日本学生支援機構の奨学金の申し込み条件や、その他の奨学金など)は下記のページにて解説してます。参考にしてみてください。